遠く離れた親を介護する遠距離介護。長い距離を何度も行き来しなければならないことから、時間や費用負担がとても大変です。
遠距離介護のメリット・デメリット、交通費を割引できるサービスを詳しく見ていきましょう。
遠距離介護のメリット
遠距離介護には、大きくわけて次の2つのメリットがあります。
生活に変化が少ない
まず1つ目のメリットは、転居しなくてすむことです。遠距離介護では、介護する人もされる人も生活の拠点は住み慣れた家です。
高齢者にとって転居することは大きなストレスとなるため、体調を崩す原因にもなります。転居をきっかけに認知症が一気に進む人もいるほどです。介護する人にとっても、引っ越しの手間や費用が掛からずにすみますし、転職や子どもの転校も避けることができます。
ストレスを軽減できる
2つ目のメリットは、介護ストレスを軽減できることです。両親と同居したり近距離で介護を行っていると、気の休まる時間がなくなって介護によるストレスが溜まりやすくなります。
しかし、遠距離介護では生活のメリハリがつけやすく気持ちの切り替えがしやすいため、介護ストレスは軽減される傾向にあるといえるでしょう。
遠距離介護のデメリット
交通費が高い
遠距離介護の最大のデメリットは、交通費が高額になることです。遠距離介護の場合、飛行機や新幹線などの公共交通機関を使って移動する人が多くなります。往復の回数が多いほど交通費もかさみ、高額になることもあるでしょう。
緊急時に駆け付けられない
緊急時にすぐに駆け付けられないのもデメリットといえるでしょう。親に急な異変があったとき、遠距離では移動に時間がかかります。遠距離介護では、近くに住む家族や親族、知人などともしっかり連携を取っておくことが大切です。
交通系割引サービスの内容
遠距離介護の場合、電車や飛行機などで移動することが多いでしょう。これらには、介護割引が利用できる場合があるので、参考にしてください。
新幹線・電車
鉄道会社には介護者を対象とした割引サービスはありません。ただし、障害者と一緒に同乗する場合には障害者割引が利用できるケースもあります。
例えばJR各社。第1種障害者と介護者の場合、普通乗車券、回数乗車券、普通急行券、定期券が5割引です。
小田急線、京王線、東急電鉄といった関東圏の私鉄、都営地下鉄などでは、第1種障害者と介護者が乗車する場合に、普通乗車券と回数乗車券、定期券が5割引きになります。
また、名古屋市の名鉄、大阪の阪急電鉄なども同様の割引です。OsakaMetro(旧大阪市営地下鉄)ではこれらに加え、特別急行券と座席指定券を除いた急行券も割引の対象となります。
福岡市営地下鉄の場合は、身体障害者1~3級、精神障害者1級保持者と介護者の乗車料金が5割引き。西日本鉄道の場合には、第1種身体障害者、第1級精神障害者と介護者の普通乗車券、回数券、定期券が5割引きです。
これらは2019年3月現在の情報です。また、各鉄道会社で割引内容は異なります。詳しくは利用したい鉄道会社のHPを確認するなどしてください。
飛行機
JAL、ANA、ソラシド、スターフライヤーの4社では介護割引が規定されています。4社とも対象となるのは、要介護もしくは要支援認定を受けている本人、二親等以内の親族、配偶者の兄弟姉妹の配偶者およびこの配偶者の父母です。
介護割引を利用するためには事前に登録が必要となるので、早めに手続きをしておきましょう。
スカイマークには介護割引はありません。しかし、障害者割引があり介護者が同じ便に乗る場合に限り、割引が適用されます。対象となるのは、身体障害者手帳、戦傷病者手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人とその介護者です。
利用には、人数や年齢に制限を設けている場合があります。詳しくは各航空会社のHPなどをチェックしてください。
バス
バス会社では、介護者を対象とした割引はありません。ただし、障害者と同乗した場合に介護者にも障害者割引が適用されることがあります。
例えば東京都バスでは、身体障害者1・2級と介護者を対象に通常運賃が5割引きになります。横浜市バスでは、第1・2種身体障害者と介護者が通常運賃5割引き、定期券3割引きに。
その他、日本全国北から南まで、通常料金のほか定期券、高速バス料金などの割引があるので、利用したいバス会社のサービス内容を確認してみるとよいでしょう。
シニア世代が使えるサービス
介護者がシニア世代の場合には、シニア割が使えるサービスもあるので、併せて利用を検討するとよいでしょう。
JRの「ジパング俱楽部」は女性60歳以上、男性65歳以上で入会でき、JR全線の運賃が2~3割引で年間20回まで利用することができます。夫婦会員の場合には、どちらかが65歳以上であれば入会することができ、割引を利用することが可能です。
「大人の休日倶楽部ジパング」は会員になると、JR東日本とJR北海道を201キロ以上利用する場合に運賃が3割引で利用できます。
これらは年会費がかかりますが、頻繁に利用する方であればお得なサービスです。
早割
遠距離介護では、早めの予約で割引が適用される早割の利用で費用を安く抑えることもできます。
JR西日本の「スーパー早得きっぷ」は、インターネット予約限定の早割で14日前までの購入が可能です。期間と座席が限定されますが、1名から購入できす。
3日前までに予約できる「WEB早得3」も急な移動予定ができたときには便利でしょう。
また、JR西日本とJR東海で利用できる「エクスプレス予約」では、1か月前から3週間前までの予約で、のぞみの普通指定席をお得に予約することができます。対象となるのは、朝6時台と昼の11~15時台までののぞみで、1~6名まで予約することが可能です。
飛行機では、JALの早期割引「先得」で最大約87%もの割引が適用されます。先得では、75日前、55日前、45日前、28日前までの予約が可能で、それぞれに違った割引率が適用されます。
また、ANAにも早めの予約で割引される「SUPER VALUE」があります。
金券ショップ・格安航空券比較サイト
遠距離介護の交通費を抑えるには、金券ショップを利用する方法もあります。金券ショップでは、株主優待の航空券や新幹線の回数券をお得に購入することができます。ただし、新幹線の回数券はお盆や正月などの繫忙期には使用できないので注意が必要です。
また、格安航空券の比較サイトを利用してもっとも安い航空券を購入する方法もあります。サイトを利用する場合には、情報が最新のものかを確認することが大切です。
まとめ
遠距離介護は交通費がかさみやすく、たくさんの費用がかかる部分です。この部分を抑えることができれば、介護にかかる費用を大幅に減らすこともできます。また、遠距離介護の交通費は医療費控除や介護保険の控除の対象にはならないため、できるだけ費用をかけたくないところです。
各交通機関の割引制度を上手に利用し、できるだけ負担の少なくすることが遠距離介護を続けるポイントとなるでしょう。