「超高齢社会」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。「高齢化社会」「高齢社会」を超えた状態の概念かな?という印象を、持たれる方が多いかと思います。
そもそも似た言葉で違いがわかりにくい、わからない方も多いことでしょう。それぞれの違いや、高齢化が進行してきた「これまで」と「これから」、海外事情なども含めて見ていきます。
超高齢社会、高齢社会、高齢化社会の意味
超高齢社会、高齢社会、高齢化社会、それぞれにはどんな違いがあるのでしょうか?
まず、高齢化社会は、65歳以上人口が全体の7%を超えた社会のことを示すとされています。国連が1956年に発表した「人口高齢化とその経済的・社会的意味」という報告書で、そう定義したことに由来します。
7%を超え、さらに高齢者の比率が上がります。7%からその倍の14%になるまでの期間を、高齢化が進む速度の指標として使われたことから、高齢者の比率が14%を超えた社会を、高齢社会と呼んでいます。
高齢化率が14%を超えた高齢社会の進行は、この段階で止まるわけではありません。さらに高齢者の割合は増え続けていきました。この、高度に進行した高齢社会を超高齢社会と呼びます。
定義については、WHOあるいは国連による「65歳以上の高齢者が人口の21%以上となった社会」が一般的です。およそ5人に1人が高齢者という、人類が過去に経験したことのない社会が、すでに到来しています。
高齢者の定義
超高齢社会、高齢化社会、高齢社会……言葉からわかるとおり高齢者に関する社会のことを指します。高齢者の定義に関しても簡単に整理しましょう。
高齢者の定義で一般的といえるのが、世界保健機関(WHO)が用いている65歳以上です。日本でも、介護保険サービスを利用できるのは原則65歳以上であったり、高齢化率を算出する際には65歳以上の割合としていることからも、「65歳以上=高齢者」と定義していることがわかるかと思います。
ですが、今後は65歳から75歳に引き上げようという話もあるので、将来的には変わる可能性もあるでしょう。
日本の高齢化率の推移は?
高齢者が増え続ける日本の現在は、どのような状況なのでしょうか。
2016年10月時点で、日本の高齢化率は27.3%でした。超高齢社会の基準である21%を、大きく上回っていることがわかります。
実は、日本の高齢化の歩みは、かなり速いものでした。大阪万国博覧会が行われた1970年に高齢者人口の比率が7%を超え、高齢化社会を迎えます。そこから24年、1994年には14%を超えて高齢社会へと突入したのです。
そして、2007年には21.5%となり、超高齢社会となりました。
この先の高齢化率は、どのようになるのでしょうか。
2017年時点での将来推計によると、2025年に高齢者の比率は30%に到達、2040年には35%を超えるとされています。その後2050年に38%付近に到達し、以降は微増にとどまると見られています。
日本国民の約3人に1人が高齢者になる日も、そう遠くない未来です。
▼高齢化の推移と将来推計

*内閣府「平成29年版高齢社会白書」より
ですが実は、2012年の推計では、2060年には高齢者の比率が39.9%に到達すると見られていました。しかし、2017年の厚生労働省の資料では38.1%に減少していることから、高齢化率上昇の進行速度は、以前の予測よりも緩和しているといえます。
高齢化の背景には少子化も
高齢化は、主には寿命の延伸と出生率の低下という、2つの要因から成り立っていると考えることができます。つまり、少子高齢化です。日本は長寿国としても知られており、事実2019年の統計では、平均寿命が男性81.41年、女性87.45年となっています。
高齢者になる65歳からの人生に、15~20年ほどの時間があるわけです。平均寿命は、この先も伸び、2065年には、男性84.95年、女性91.35年になると推定されています。
いっぽうで、子供の数は減っています。出生数ベースで推移を見ると、第二次ベビーブームである1973年には、およそ210万人でした。その後減少に転じ、2016年には97.7万人と、100万人を割り込んでいます。約40年で出生数は半分以下にまで落ちているのです。
ただし、合計特殊出生率(1人の女性が産む子どもの数)については、2005年の1.26が最低で、その後はゆるやかな上昇に転じています。2015年には1.45にまで回復しました。
出産可能な年齢の女性が減少しているため、出生数の回復にはつながっていませんし、人口維持に必要な2.08には届きませんが、今後この回復基調が続くことが期待されます。
高齢化事情の世界比較
ここで、海外の高齢化事情に目を向けてみましょう。
▼主要国における高齢化率が7%から14%へ要した期間

*内閣府「平成29年版高齢社会白書」より
主要国のなかで一番早く高齢化社会(65歳以上人口が全体の7%超)に突入したのは、19世紀、1864年のフランスでした。同じく、ヨーロッパでは1887年にはスウェーデンが高齢化社会を迎えています。イギリスやドイツも、1930年前後に、高齢化社会を迎えました。
これらのヨーロッパ諸国は、いずれも1970年代に高齢者人口が14%を突破し、高齢社会を迎えています。高齢化社会から高齢社会を迎えるまでの期間は、最短のドイツで40年、最長のフランスでは115年という時間をかけています。
対して、日本を含めた東アジア諸国では、この期間が短いのが特徴です。
日本では高齢化社会に突入したのが1970年と、上記のヨーロッパ諸国に比べると格段に遅かったにも関わらず、24年という短い歳月しかかかっていません。
1999年に高齢化社会に入った韓国では、わずか18年で駆け抜けてしまいました。韓国では合計特殊出生率も日本より低い状態が続いており、高齢化の急激さが日本を上回っています。
超高齢社会の問題
高齢者が多い社会では、さまざまな課題が発生します。かつてのような、高齢者人口が少なかった時代であれば、たくさんの現役世代で少ない高齢者を支えることができました。
社会保障という観点では、現役世代への負担がより大きなものになります。
2025年には、すべての団塊の世代が後期高齢者になることが問題視されています。
1990年には5.1人の現役世代が1人の高齢者を支えていました。これが、2025年には1.8人で1人の高齢者を支えることになります。
社会保障制度もさまざまな見直しを迫られることになるでしょう。
また、高齢者と病気は切っても切れない関係です。そのため、医療費増大の問題も出てきます。
認知症を持つ高齢者も増加します。2012年に462万人だった認知症高齢者は、2025年には約700万人になる見通しです。
認知症だけではなく、高齢者が増えることで、介護を必要とする要介護者も増加していきます。現在でも介護の人材不足が叫ばれていますが、これといった対策がなければ、今後ますますその傾向が高まっていくことも予測できます。
これからのさらなる高齢化に対して、さまざまな対策を講じていく必要に迫られています。
高齢者が「生きがい」を持てる社会へ
超高齢社会は、活力がなく大変な社会だと思ってしまうかもしれません。
しかし、現役世代だけではなく、「健康な高齢者」も「支援を必要とする高齢者」を支える役割を果たすことが、これからの時代には求められています。
環境も整いつつあります。たとえば、高齢者をめぐる雇用環境です。60歳という定年年齢が定着したのは1980年代ですが、現在、定年退職65歳への段階的な延長が行われています。また、定年退職者の雇用に積極的な事業者も増加しています。
労働以外にも、高齢者が社会参加する道が広がりを見せています。たとえば、趣味などのグループ活動や、ボランティアの場の増加です。
こういったところで新たな人間関係を構築し、コミュニケーションを図ることは、認知症の発症を抑制する効果が期待できます。それだけではなく、社会参加を行うことで「誰かに必要とされている」という実感が得られるのは、何物にも代え難いといえます。
老いは、誰にも等しくやってきます。これからさらに高齢化が進んでいきますが、誰もが幸福な高齢期を過ごすことができる「生きがい」あふれる社会の実現こそが、現在に、未来に生きる人たちには欠かせないものとなるでしょう。