50回目を迎えた、“親の介護の最新事情”がわかるシリーズ企画。介護に関わるさまざまな情報を、データを通じて客観的に見ていきます。
前回は、「高齢者の入浴中の事故」について見てみました。
今回は在宅介護に着目し、「訪問介護・通所介護の利用状況」などについて見ていきます。
介護サービスの利用をはじめるのに相談した相手は?
日本政策金融公庫総合研究所は、2015年12月、高齢者の介護に携わっている1,059人に「訪問介護・通所介護に関するアンケート」を実施しました。
それによると、回答者が介護に携わっている65歳以上(被介護者*)の人数は、1人82.7%、2人13.9%、3人以上3.4%。同居している被介護者数をみると、0人(つまり別居)が47.4%で、1人は48.0%、2人以上は4.6%となっています。
要介護認定を受けている被介護者のうち、介護保険サービスを利用しているのは87.4%です。では、介護保険サービスを利用するに当たり、最初に相談したのは誰だったのでしょうか。次の図をご覧ください。

*日本政策金融公庫総合研究所「介護者からみた介護サービスの利用状況」平成28年
「市役所や町村役場」が最多の28.3%を占め、以下「入院・通院していた病院」23.4%、「地域包括支援センター」16.7%、「近隣の介護事業者」10.5%と続いています。家族や友人よりも、公の場所などで相談する人が多いようです。
*被介護者 アンケート回答者が介護に携わっている65歳以上の人で、回答者が直接介護していない人や同居していない人も含む。
訪問介護より、通所介護(デイサービス)を利用する人が多い
次に、訪問介護と通所介護(デイサービス)の利用率です。
全体では、訪問介護は38.1%、通所介護は57.6%が利用しています。通所介護を利用する人の方が多い状況です。
訪問介護を利用している割合は、要介護認定を受けている被介護者が1人の場合は34.9%ですが、2人以上になると59.0%に跳ね上がります。
同様に通所介護の利用割合は、要介護認定の被介護者1人では55.8%、2人以上で69.2%。
2人以上の要介護者がいると、このようなサービスを利用することが多くなる傾向が見て取れます。
訪問介護・通所介護事業者について知りたいこと
続いて、訪問介護事業者、通所介護事業者を知った方法についてです。
いずれも「ケアマネジャーに紹介された」という人が62~64%を占めています。それ以外では、病院などの医療機関、地域包括支援センターがそれぞれ11~15%という状況です。
インターネットでの情報収集の状況についても調べています。

*日本政策金融公庫総合研究所「介護者からみた介護サービスの利用状況」平成28年<クリックで拡大>
全体では、訪問介護事業所・通所介護事業所の情報を集めるのに、35%~40%ほどの人がインターネットを利用しています。
内訳をみると、オアシスナビなど民間の介護施設検索サービスで調べた人が、15%~20%ほどを占めています。
では、インターネットでどういった情報を調べようとしたのでしょうか。次の図をご覧ください。

*日本政策金融公庫総合研究所「介護者からみた介護サービスの利用状況」平成28年<クリックで拡大>
全体では、訪問介護事業所の場合は「サービスを利用できる時間帯」、通所介護事業所の場合は「事業所の場所」が最多です。前者は「いつ来てもらえるのか」、後者は「家の近くにあるかどうか」が事業所選択の一番の条件となっていることが推測できます。
特徴的なところでは、訪問介護の「利用者や家族からの評判」、通所介護の「事業所内の介護の風景や様子」を調べる女性が多いことが挙げられます。
一番不満に感じるのは「自己負担額が高い」と
最後に、訪問介護・通所介護への不満についてです。
いずれも「不満を感じたことがない」人が最多です。不満としては、どちらの場合も「自己負担額が高い」が最多でした。いずれも次に「利用回数に制限がある」「ヘルパー(介護職員)によって介護の仕方にばらつきがある」などが続いています。
訪問介護の場合は「お願いしても介護保険内では対応できないと断られることがある」、通所介護の場合は「介護されている時の利用者の様子がよくわからない」が上位に挙がっている点は、それぞれの特徴が表れているといえるでしょう。
<構成・文:髙橋光二>