45回目を迎えた、“親の介護の最新事情”がわかるシリーズ企画。介護に関わるさまざまな情報を、データを通じて客観的に見ていきます。
前回は、「軽費老人ホーム・ケアハウスの種別や入居者の状況」について見てみました。
今回も引き続き、軽費老人ホーム・ケアハウスを取り上げ、「医療ケアが必要な入居者や看取りの状況」などについて探ります。
軽費老人ホーム・ケアハウスには、どんな疾患を持った入居者がいる?
まず、軽費老人ホーム・ケアハウスにおける医療ケアが必要な入居者の状況についてです。
1施設あたりの平均人数を出したデータをみると、「インシュリン投与」がもっとも多く平均0.4人、つぎに「酸素療法管理」が0.2人と続きます。0.1人は「人工肛門、人工膀胱等の管理」「浣腸、摘便」などがあります。
前回で入居者のプロフィールを見てみました。要介護度は自立がもっとも多く、「自立+要支援」で入居者の半分以上を占めています。ある程度自立して生活できる人を対象にしている施設が多いので、入居者の年齢は80代後半がもっとも多く年齢層が高めとはいえ、医療ケアを必要とする入居者が少ないのかもしれません。
次に、疾患を持つ入居者の状況です。

*公益社団法人 全国老人福祉施設協議会/老施協総研「第8回全国老人ホーム基礎調査報告書」平成27年<クリックで拡大>
圧倒的に「高血圧症」の入居者が多いことがわかります。その次には、高血圧症と深い関わりがある「心疾患」や、「糖尿病」「脳血管疾患」が続いています。
看取りの実績は少ない?
次に、軽費老人ホーム・ケアハウスにおける「看取り」の状況を見てみます。全国老人福祉施設協議会の調査によると、看取りの実績のある施設は5.6%に過ぎません。では、なぜ看取りを行わないのでしょうか。次の図が、その理由です。

*公益社団法人 全国老人福祉施設協議会/老施協総研「第8回全国老人ホーム基礎調査報告書」平成27年<クリックで拡大>
「看護体制が取れない」56.2%、「介護体制が取れない」53.3%と、看取りに必要な人的体制が取れない施設が半数以上。次に「施設の方針として看取りを行わない」施設が38.9%と続いています。
介護型であるケアハウス以外は、基本的に介護の必要がほとんどない自立した生活ができる人を対象にしています。そのため、そもそも看取りに備えていない施設が多いのかもしれません。入居者は要介護度が重くなると、別のホームに転居することも多いようです。
最後に、軽費老人ホーム・ケアハウスでの死亡原因について探ります。
「看取り介護加算」の対象となった入居者がいる施設における死因の内訳をみると、「老衰」が72.7%と圧倒的に高く、つぎに「がん」が15.2%で続いています。その他では「心疾患」、「肺炎」がそれぞれ3%でした。
ちなみに、「看取り介護加算」とは、平成18年4月の介護報酬改定において創設された介護報酬で、所定の基準を満たした看取りが行われた場合に施設に支給されるものです。
軽費老人ホーム・ケアハウスは、その費用の安さから入居希望者が多く、入居までの時間がかかると言われています。そのため、希望にそった施設を探すことは難しいかもしれません。それでも、「看取りまでしっかり行ってほしい」などと明確な希望がある場合は、その実績や実施の意向を入居前に必ず確認しておくことが必要です。
<構成・文:髙橋光二>
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