38回目を迎えた、“親の介護の最新事情”がわかるシリーズ企画。介護に関わるさまざまな情報を、データを通じて客観的に見ていきます。
前回は、「特養における医療受け入れ状況、夜間・緊急時の体制」について見てみました。
今回は、「特養における看取りの状況」について探っていきます。
現在看取りを行っている特養は、8割に満たない
特別養護老人ホーム(特養)は、最期までそこで過ごし、“終の棲家”とする入所者が多い施設です。では、特養での“看取り”はどのような状況なのでしょうか。まずは次の図をご覧ください。

*公益社団法人 日本看護協会 医療政策部「特別養護老人ホーム・介護老人保健施設における看護職員実態調査報告書」(2015年)
「利用者・家族からの希望に応じて施設で看取る」という特養が78.5%。特養は“終の棲家”のイメージが強い傾向にありますが、20%強は現在看取りを行っていないことがわかります。
続いて、「現在は看取りは行っていないが、今後行っていく予定」が10.3%。「現在看取りをしている」と併せて、将来的には90%近くの特養が看取りを行う方針であることがわかります。
施設での看取りを行っているものの、入所者の容体によっては病院に搬送し、その入院先で亡くなる入居者もいます。その割合は、2014年度の調査によると26.9%でした。
特養が看取りを行うために必要としていることは何?
特養で看取りを行う上では、どういった取り組みが必要なのでしょうか。また、それらの取り組み状況はどうなっているのでしょうか。次の図をご覧ください。

*公益社団法人 日本看護協会 医療政策部「特別養護老人ホーム・介護老人保健施設における看護職員実態調査報告書」(2015年)<クリックで拡大>
すでに実施されているものとしては、「職種間の情報共有(委員会や会議など)や職種間連携」「入所者・家族との十分な話し合いや不安に対するサポート体制」が7割以上を占めています。
また、今後整備・実施する予定のものとしては、介護職員や看護職員の「知識・技術の向上(研修の活用等を含む)」が30%前後と比較的多くを占めています。
一方、「特に考えていない」という課題は「訪問看護ステーションとの連携強化」が65%近くとなっています。
なお、介護職員や看護職員の増員に関しては、「今後の整備・実施を予定」が24~30%、「今後の検討を予定」が20%前後、「特に考えていない」が30%前後と、施設によって対応が大きく分かれていることがわかります。
この調査では、特養の看護職員が入所者を看取る際に難しさを感じるかどうかも調べています。その結果、「やや感じる」が43.5%、「いつも感じる」が35.1%で、併せて80%近くの人が難しさを感じていると回答しています。とはいえ、「今後、看取りケアに積極的に取り組んでいきたいか」という問いに対しては、「とてもそう思う」が42.7%、「ややそう思う」が39.0%と、こちらも併せて80%以上の人が前向きに取り組む気持ちを示しています。
看取りに必要な特養との連携。家族にできることは?
特養で看取りを行う看護職員は、家族や医師、介護職員との連携が重要になります。その連携が「とてもうまくいっている」「ややうまくいっている」と回答した割合は、家族との間は計75.2%、医師との間は計72.2%、介護職員との間は計71.3%でした。僅差ながら、家族との連携がもっともうまくいっていることがわかります。
では、連携がうまくいかない場合は、どういった要因があるのでしょうか。次の図をご覧ください。

*公益社団法人 日本看護協会 医療政策部「特別養護老人ホーム・介護老人保健施設における看護職員実態調査報告書」(2015年)
「職員の看取りに関する知識・経験の不足」が58.6%と最多を占めています。
また、「多職種で話し合う機会や場が少ない」34.8%、「職種や職位の違いで心理的な壁がある」34.3%、「お互いの考えや意見が伝わらない」「家族と話し合う機会や場が少ない」30.4%。働くスタッフ同士や、入居者家族とのコミュニケーションの持ち方に問題があることが伺えます。
働くスタッフの間のことに、入所者本人やご家族はなかなか口出ししにくく、専門的なことは理解できないかもしれません。
しかし、「お互いの考えや意見が伝わらない」「家族と話し合う機会や場が少ない」というのは、入居者本人や家族の方から歩み寄ることができます。特養で看取りを希望する場合には、日ごろからスタッフとのコミュニケーションを意識することが大事であるといえるでしょう。
<構成・文:髙橋光二>
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