37回目を迎えた、“親の介護の最新事情”がわかるシリーズ企画。介護に関わるさまざまな情報を、データを通じて客観的に見ていきます。
前回は、「特養にはどういった人が入所しているのか」について見てみました。
今回も特養がテーマ。「特養における医療の受け入れ状況、夜間・緊急時の体制」について探っていきます。
胃ろう、人工肛門、インスリン…対応していない特養も?
まず、特別養護老人ホーム(特養)における医療ニーズのある人の受け入れはどのような状況にあるのかを見てみます。次の図をご覧ください。

*公益社団法人 日本看護協会 医療政策部「特別養護老人ホーム・介護老人保健施設における看護職員実態調査報告書」(2015年)<クリックで拡大>
2015年度における、医療処置が必要な入所者の受け入れ実績です。多いものから、「褥瘡処置」87.6%、「経管栄養法(胃ろうを含む)」80.6%、「吸引(口腔・鼻腔・気管内のいずれか)」79.7%、「尿道留置カテーテル」79.4%、「人工肛門(ストーマ)」60.7%、「インスリン療法」60.3%。
一方、特養で受け入れ実績の少ないものは、「腹膜透析(CAPD/APD)」0.2%、「人工呼吸療法(人工呼吸器使用)」1.9%、「中心静脈栄養法(IVH)」6.1%、「気管カニューレ」9.8%。
たまたま、そのような医療ニーズのある入所希望者がいなかった可能性もあります。しかし少なくとも、「全ての特養でどんな医療処置でも受けられる」、というわけではないことがわかります。
受け入れの少ない医療処置が必要な入所希望者は、自宅近くに対応可能なホームがない場合もあります。まずは、どの特養なら受け入れているのかを調べるなど、特に早くから準備に動く必要があるといえるでしょう。
続いて、「現在、受け入れ実績がない」と回答した医療処置について、今後の受け入れの可否について見てみます。次の図をご覧ください。

*公益社団法人 日本看護協会 医療政策部「特別養護老人ホーム・介護老人保健施設における看護職員実態調査報告書」(2015年)<クリックで拡大>
ここでも「褥瘡処置」の受け入れが76.7%と最も高く、以降「尿道留置カテーテル」69.3%、「人工肛門(ストーマ)」61.5%、「経管栄養法(胃ろうを含む)」47.4%、「吸引(口腔・鼻腔・気管内のいずれか)」45.3%。
2015年は実績がなかった、もしくは、現在は受け入れていなくても、今後は受け入れる方向にある特養が一定数あることがわかります。あきらめていた近所の特養に受け入れ態勢が整うこともあり得るのです。
医療ニーズが合わない利用者を今後受け入れるために、特養にはどんな体制が求められているのでしょうか。
半数以上の特養が「医師との連携強化」、「看護職員の増員」、「研修などによる介護・看護職員のスキルアップ」などが必要であるとしています。
特養で「夜間・緊急時の備え」は、どの程度できている?
次に、夜間や緊急時の体制についてです。「対応マニュアルや施設のルール」が備わっている特養の割合は、「緊急時対応の場合」で98.4%、「夜間対応の場合」98.1%。ほとんどの特養には、夜間や緊急時に職員が慌てず対応してくれるシステムが整っていることがわかります。
また、入所者の容態が急変し一時的に入院が必要となった場合、いつでも入院できる協力関係を築いている医療機関がある特養は83.6%と、多くを占めています。そういった医療機関がない特養は、その都度、対応できる医療機関に搬送しているところがほとんどです。
また、気になる「夜間における医師の対応体制」については、次の図のとおりの状況です。

*公益社団法人 日本看護協会 医療政策部「特別養護老人ホーム・介護老人保健施設における看護職員実態調査報告書」(2015年)
「夜間に医師が対応している」といっても、違いがあることがわかります。「必要時、施設に往診する体制がある」という場合もあれば、「医師が電話で対応・指示する体制がある」だけであったり、そもそも「夜間は医師の対応体制はない」こともあります。
実際に特養への入居を考える際は、事前にこうした体制についてしっかり確認しておくことが大切ですね。
<構成・文:髙橋光二>
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