34回目を迎えた、“親の介護の最新事情”がわかるシリーズ企画。介護に関わるさまざまな情報を、データを通じて客観的に見ていきます。
前回は、「要介護者の人数推移、介護が必要になった理由」について見てみました。
今回は、「高齢者の健康状態や、終末期への備え」について探っていきます。
加齢とともに、健康状態は悪くなる
まず、60歳以上の高齢者は現在の健康状態についてどのように意識しているかを見てみます。下の図をご覧ください。

*内閣府「平成27年版高齢社会白書」<クリックで拡大>
年齢層が上がるにつれ、「あまりよくない」「よくない」という人が増えていることが一目瞭然です。要介護・要支援の人の割合が60%を超す85歳以上ともなると、「あまりよくない」「よくない」を合わせて40%近くを占めるようになります。
このように、加齢とともに自らの衰えを自覚する人が増えていく中、終末期や自分の死後について、一人暮らしの高齢者はどのように考えているのでしょうか。
“延命治療”は90%以上が「ノー」という結果に
次の図をご覧ください。一人暮らしをしている65歳以上の高齢者に「今後おこるかもしれないことに対する備え」について質問した結果です。

*内閣府「平成27年版高齢社会白書」<クリックで拡大>
まず、「終末期医療」については、53.4%の人が「考えている」と回答しています。「葬儀」については61.2%、「お墓」については60.8%が「考えている」との回答です。
次に「延命医療」について、詳しく見てみます。下の図をご覧ください。

*内閣府「平成27年版高齢社会白書」<クリックで拡大>
「万一、あなたの病気が治る見込みがなく、死期が近くなった場合、延命のための医療を受けることについてどう思いますか。この中から1つだけお答えください」と質問をした結果です。
「延命のみを目的とした医療は行わず、自然にまかせてほしい」と考える人が年を追うごとに増えていることがわかります。
先ほどの「今後おこるかもしれないことに対する備え」という設問では、終末期医療について考えていないという人が41.8%いました。具体的には考えていないけれど、「延命治療をするかしないか」という二択になると、意見がはっきりしているということかもしれません。
延命治療は、人間の尊厳にかかわる大きな問題です。本人やほかの家族の考え方を確認しておかなかったために、「延命治療をするべきか」と家族間でもめるケースも少なくありません。話しにくいことではありますが、日頃から本人やほかの家族の考え方を確かめておくことをおすすめします。
また、今回のデータを見ると、今後のことをあまり考えていない高齢者も多数いることがわかります。
元気なうちはよいですが、病気になったり介護が必要になったときに不安が大きくなることは間違いありません。家族がいる人はもちろん、一人暮らしであればなおさらですね。
そうなった時に備えて必要な準備をしておけば、余計な不安を減らすことができます。ですから、終末期についてや死後のことは、元気なうちにしっかり考えておきましょう。
<構成・文:髙橋光二>