30回目を迎えた、“親の介護の最新事情”がわかるシリーズ企画。介護に関わるさまざまな情報を、データを通じて客観的に見ていきます。
前回は、「老人ホームでの実際の支払額」について見てみました。
今回は、「老人ホーム入居者の満足度」について探っていきます。
老人ホームでの生活に、約70%の入居者は“満足”
老人ホームへ入居した人は、どういったことが「入居して良かった」と感じているのか、気になるところですね。そこで、下の図をご覧ください。

*公益社団法人全国有料老人ホーム協会「有料老人ホームにおける前払金の実態に関する調査研究事業報告書」平成26年<クリックで拡大>
介護付(有料老人)ホーム、住宅型(有料老人)ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)のいずれも、「『いつも誰かが見守ってくれているという安心感』が得られたことが良かった」と回答した人が63~66%程度を占めています。
介護付の場合は「老いや介護への不安の解消」が同等以上に多く、やはり24時間365日、ホームのスタッフに常時介護を受けられる安心感が大きいことが見て取れます。この回答はほかのホームでも次に多く、“老いや介護への不安”は、ホーム入居者にとって切実な問題であるといえるでしょう。
この上位2つの結果を見ても、多くの入居者は“老人ホームの安心感”に満足していることがわかります。
また、「家族・親族へ世話をかけることや介護負担が軽減すること」が、いずれのホームでも3番目に多く挙がっています。「いつも誰かが見守ってくれているという安心感」「老いや介護への不安の解消」と考えあわせれば、入居者の心理も察することができます。
高齢の一人暮らしや夫婦二人暮らしの場合は、「家族に心配をかける負担感や要介護状態になった時の不安が、ホームへの入居で解消できて良かった」。
家族と同居中の高齢者は、「同居の家族に負担をかけずに済むようになって良かった」、という思いが見えます。
ほかにも、「他の入居者との交流などで人間関係が広がること」といった前向きな感想が少なくないのは、注目に値するでしょう。
老人ホームでの生活全般に対する評価では、「とても満足している」と「ある程度満足している」の合計が、介護付の場合は75.9%、住宅型は69.1%、サ高住は71.7%と、いずれも満足感を覚えている入居者が多いことがうかがえます。一方で、「どちらともいえない」といった回答や無回答を含め、「わからない、何とも言えない、不満」という人が3割程度を占めていることも注意すべきでしょう。
老人ホーム入居前の予想と、入居後のギャップ
では、「老人ホーム入居前後で予想と違った」ということはあるのでしょうか。下の図をご覧ください。

*公益社団法人全国有料老人ホーム協会「有料老人ホームにおける前払金の実態に関する調査研究事業報告書」平成26年<クリックで拡大>
「24時間の看護師の常駐体制」と「栄養やバランスなどに配慮した食事の提供」が飛び抜けて多いことがわかります。たとえば「24時間の看護師の常駐体制」の場合、“看護師がもっと医療行為をしてくれると思った”などのギャップを感じた人もいたかもしれません。食事のことも含め、入居者は入居前にどの程度把握できていたのかが気になるところです。
いずれにしろ、入居前に気になる点は納得できるまでホームから説明を受ける必要があるといえるでしょう。ギャップがおこりやすい「看護体制」や「食事」はもちろんのこと、ほかにもここに挙げられた項目は、そのチェックポイントとなります。大いに参考にしてください。
<構成・文:髙橋光二>
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