29回目を迎えた、“親の介護の最新事情”がわかるシリーズ企画。介護に関わるさまざまな情報を、データを通じて客観的に見ていきます。
前回は、「老人ホームでの生活」について見てみました。
今回は、「老人ホームでの実際の支払額」について探っていきます。
実際に老人ホーム入居者が払った前払金や月々の生活費はいくら?
25回目では、入居前の前払金予定額などのデータを見ました。今回は、実際に老人ホームに支払った前払金や生活費について見てみます。
老人ホームに支払った前払金はどこから工面したのでしょうか。下の図をご覧ください。

*公益社団法人全国有料老人ホーム協会「有料老人ホームにおける前払金の実態に関する調査研究事業報告書」平成26年<クリックで拡大>
3つのホームとも「預貯金」を取り崩したという人が圧倒的です。一方で、「前払金の支払いはなかった」という人が、住宅型の40.6%、サ高住の34.4%と多くを占めています。
支払った前払い金の額はどうでしょうか。下の図をご覧ください。

*公益社団法人全国有料老人ホーム協会「有料老人ホームにおける前払金の実態に関する調査研究事業報告書」平成26年<クリックで拡大>
支払った金額は、介護付の場合は「300万円未満」と「3000万円以上」が多く、その間はまんべんなく分布しています。住宅型とサ高住は、ほとんどが50万円未満です。住宅型とサ高住は、まとまったお金が少なくても、入居しやすいことがわかります。
月々にかかる費用としては、介護付の場合は「20~25万円未満」、住宅型とサ高住は「10~15万円未満」が最も多くなっています。それらの原資としては、厚生年金や共済年金、国民年金が多く、次に預貯金や利子・配当が続いています。
内閣府の調査では、「世帯主が65歳以上の世帯では貯蓄は全世帯平均の1.4倍で、貯蓄の主な目的は病気や介護への備え」という調査結果があります。多くの高齢者が将来を考え、いざというときのお金を用意しているようです。
これらの結果は、多少調査方法が異なるものの、25回目で紹介した“資金調達方法の予定や、入居前の予定額”とほぼ変わらない結果です。
老人ホーム入居者は、将来の生活費にどの程度不安を感じている?
生活費については、「現在も将来もあまり心配していない」という人が介護付では半数以上を占めていますが、住宅型およびサ高住では約39%。「現在は心配していないが、将来は心配」という人が、いずれのホームもそれぞれ約34~36%を占めています。「現在の生活費負担が重く将来はさらに不安」という人を含めれば、約38~47%もの人が将来について不安を持っています。
老人ホームに入居したらもう安心というわけではありません。毎月の家賃や生活費はずっと払い続けなければならないもの。前もって計算しておくことが必要です。そのことは、よく理解しておきましょう。
<構成・文:髙橋光二>