23回目を迎えた、“親の介護の最新事情”がわかるシリーズ企画。介護に関わるさまざまな情報を、データを通じて客観的に見ていきます。
前回は、老人ホームへの入居を考えるときに、最も気になる「老人ホームの入居費用」について探ってみました。
今回は前回に引き続き、有料老人ホームの入居費用における「全額前払い方式」、「併用方式」、およびサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)について見ていきます。
“初期償却率”に要注意 戻ってこないお金がある!?
前回は、「月払い方式」について、詳しく見ていきました。
今回はまず、「全額前払い方式」を見てみましょう。次の図をご覧ください。

*公益社団法人全国有料老人ホーム協会「有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅に関する実態調査研究事業報告書」平成25年<クリックで拡大>
有料老人ホームの費用に関しては一概に比較することが困難です。本調査では、より正確な状況を把握するため、「75歳自立で入居」の場合、「85歳要介護3で入居」の場合に分けています。
有料老人ホームの前払い金(入居一時金)は、「75歳自立で入居」の場合、平均で介護付(有料老人)ホームは約1,990万円、住宅型(有料老人)ホームは約1,750万円。
「85歳要介護3で入居」の場合は、介護付が約1,125万円、住宅型は約1,280万円となっています。
なお「全額前払い方式」といっても、生活にかかる費用すべてを前払いするわけではありません。基本的には、「(家賃)全額前払い方式」と考えた方がよいでしょう。実際に、内訳をみると、介護付・住宅型のいずれも「家賃相当額」が89.0~95.5%と大半を占めていることがわかります。
前払い金方式の場合、高額となるだけにその内容には特段の注意を要しますが、特に確認すべきは、「初期償却」(即時償却)についてです。
有料老人ホームの前払い金(入居一時金)は、入居契約時点で15~50%を償却し、残りの85~50%を5~10年で均等に償却するという契約が一般的。この入居契約時点で償却される分が「初期償却」や「即時償却」といわれているものです。
例えば、1500万円の前払い金で初期償却率が20%の場合、300万円は、契約が完了した時点でもう戻ってこないお金ということになります。残金が5年の均等償却の場合、毎年240万円ずつが充当されます。したがって、仮に3年で退去した場合、返ってくるお金は480万円だけとなります。
下の図をご覧ください。

*公益社団法人全国有料老人ホーム協会「有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅に関する実態調査研究事業報告書」平成25年<クリックで拡大>
住宅型では、初期償却率15%未満が半数以上を占めていることがわかります。介護付では、割合が広く分布しています。
高額な前払い金を支払って入居し、早期に逝去してしまった場合は仕方ないにしても、「気に入らない」「合わない」といった理由で転出してもお金は戻ってはきません。ですから、ホーム選びはくれぐれも慎重を要するといえるのです。
「月払い方式」と「全額前払い方式」の中間的な「併用方式」
次に、「併用方式」です。下の図をご覧ください。

*公益社団法人全国有料老人ホーム協会「有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅に関する実態調査研究事業報告書」平成25年<クリックで拡大>
前払い金の平均は、「75歳自立で入居」の場合、介護付(有料老人)ホームは約773万円、住宅型(有料老人)ホームは約532万円。
「85歳要介護3で入居」の場合は、介護付が約609万円、住宅型は約520万円となっています。

*公益社団法人全国有料老人ホーム協会「有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅に関する実態調査研究事業報告書」平成25年<クリックで拡大>
気になる初期償却率は、26%以上50%未満というところが最も多くを占めます。
つまり、「全額前払い方式」に比べて初期償却が多い(=契約時点で戻ってこない金額が多い)傾向があります。
「併用方式」の場合、別途月額利用料も徴収していくので、前払い金は“敷金”的な性格が強まり、入居時点での償却率を高くしていることがうかがえます。
また、「併用方式」では、「全額前払い方式」に比べて前払い金が安いため、率を高くしているともいえます。
平均すると、「全額前払い方式」も「併用方式」も初期償却の金額自体は大差ないという結果です。
また、「併用方式」の月額利用料は、介護付き・住宅型・入居タイミングでさほど違いはなく、いずれも約22~24万円となっています。
「併用方式」は、「月払い方式」と「全額前払い方式」の中間的な料金体系といえます。「月払い方式」「全額前払い方式」「併用方式」のいずれにするかは、入居希望者や家族の資産や収入の状況などによって最適なものを検討すべきでしょう。
賃貸住宅感覚で入居できるサ高住
次に、サ高住の場合です。
サ高住は、前回紹介したように、月払い方式がほとんどとなります。
この一連の調査によると、敷金は69.4%のサ高住が徴収しており、その平均金額は約16万円となっています。月額利用料の平均は約13万円で、家賃(個室利用料金)と食費が多くを占めています。
サ高住は、有料老人ホームに比べると賃貸住宅感覚の手軽な費用で入居できるかもしれません。しかし、料金内で提供されるサービスは「見守り」と「生活相談」が主なものであり、介護などのサービスは外部の事業者を利用するところが多いのです。その分の費用は別途かかることになりますので、実際にいくら必要になるのか、シミュレーションした上で検討することが不可欠といえるでしょう。
<構成・文:髙橋光二>
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