21回目を迎えた、“親の介護の最新事情”がわかるシリーズ企画。介護に関わるさまざまな情報を、データを通じて客観的に見ていきます。
前回は「意外に知らない契約方法の違い」について探ってみました。
今回は「老人ホームの居室の広さや設備」について見てみます。
広い部屋に住みたいなら、サ高住? 有料老人ホーム?
住まい全般に言えることですが、部屋の広さ(床面積)は暮らしやすさを左右する大きな要素。そこで、老人ホームの居室の面積はどうなっているのかを見てみましょう。まず、下の図をご覧ください。

*公益社団法人全国有料老人ホーム協会「有料老人ホームに関する実態調査及び多様化する有料老人ホームの契約等に関する調査研究 調査報告書の公表について」平成24年<クリックで拡大>
老人ホームの居室面積は、厚生労働省の指針によって上の図のように基準値が定められています。
ですが、上記はあくまで最低限のルール。それより広い居室も多数あります。
では、実際はどうなっているのでしょうか。次の図をご覧ください。介護付(有料老人)ホーム、住宅型(有料老人)ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の最多居室面積(*)を比べたものです。
*老人ホームでは居室の面積が部屋ごとに異なることが多いため、最多居室面積とは“その施設で最も多い床面積の居室”のことを指しています。

*公益社団法人全国有料老人ホーム協会「有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅に関する実態調査研究事業報告書」平成25年<クリックで拡大>
介護付の場合は「18~25㎡未満」が最多の42.5%、次いで「13~18㎡未満」が24.3%で、平均は22.2㎡となっています。
住宅型は、「13~18㎡未満」が最多の26.7%、次いで「13㎡未満」が22.6%で、平均は16.0㎡となっています。
サ高住は、「18~25㎡未満」が最多の64.9%、次いで「25~30㎡未満」が14.5%で、平均は23.9㎡です。
サ高住が比較的広いのは、基本的に床面積が25㎡以上必要という、前述の基準値によるものと考えられます。
なお、畳のサイズはさまざまありますが、中京間というサイズだと1畳の面積は1.62㎡です。13㎡だと8畳、18㎡だと11畳、25㎡だと15畳ぐらいの広さということになります。
お風呂やキッチンは部屋付きがいい?
次に、居室の設備について見てみましょう。下の図をご覧ください。

*公益社団法人全国有料老人ホーム協会「有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅に関する実態調査研究事業報告書」平成25年<クリックで拡大>
サ高住は、トイレと洗面設備の設置が義務付けられているため、この調査からは除外されています(実質100%設置されています)。
設置の割合が少ないのは、浴室と台所。浴室は、介護付で8.6%、住宅型で5.5%、一番多いサ高住でも29.7%どまりとなっています。
台所は、介護付で14.4%、住宅型で11.3%、サ高住で46.4%です。
同じ調査で、共用部の設備についても調べています。
共同浴室があるのは、介護付で97.9%、住宅型で92.9%、サ高住で78.6%と、多くの施設で設置しています。個室の浴室が少ないのは、そのためと考えられます。
また、共用のキッチンを設置しているのは、介護付で32.3%、住宅型で31.2%、サ高住で68.8%です。部屋についている割合より高いという結果が出ています。
食堂の設置率は介護付き、住宅型、サ高住のすべてにおいて95%以上。キッチンはほとんど使用せず「食事は食堂で」という人が多いと思われます。「たまに自炊したい」という場合でも、共同キッチンがあれば十分なのかもしれません。
要介護度が高くなると、自分でお風呂に入ることや、食事を作ることが難しくなってきます。比較的元気なうちから入居する人が多いサ高住では、自立を前提に居室の設備が充実している傾向があるといえるでしょう。
以上のように、居室面積や設備は老人ホームによってバラつきがあります。入居者のライフスタイルや要介護度などを勘案の上、適切なホームを選ぶことが肝要であるといえます。各ホームに用意されている、実際に家具を置いたモデルルームを見学するとイメージがつかみやすいでしょう。
<構成・文:髙橋光二>
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