14回目を迎えた、“親の介護の最新事情”がわかるシリーズ企画。介護に関わるさまざまな情報を、データを通じて客観的に見ていきます。
前回は「介護離婚」について探ってみました。
今回から、老人ホームなどの施設に関するデータについて探っていきます。
まずは、「老人ホームの種類別の数の推移」について調べてみました。
「介護付き有料老人ホーム」は大幅に増やせない!?
下の図をご覧ください。
全国有料老人ホーム協会が独自にまとめた「平成25年度 有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅に関する実態調査研究事業報告書」で、全国の有料老人ホームと、サービス付き高齢者向け住宅についてを報告しています。平成25年7月時点で有料老人ホーム(健康型ホームを含む)は、全国に計8,424施設があったそうです。その総定員数は34万7,991人です。

*公益社団法人全国有料老人ホーム協会「有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅に関する実態調査研究事業報告書」平成25年<クリックで拡大>
一方、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は2,875カ所で、総戸数は8万8,536戸(*)となっています。
*一般社団法人 すまいづくりまちづくりセンター連合会が運営する「サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム」によると、平成28年2月時点のサ高住は3642施設(棟)、11万7601戸。数字には少しずれがあります。
次に、有料老人ホームは年次別にどれだけ増えているのかを見てみます。下の図をご覧ください。

*公益社団法人全国有料老人ホーム協会「有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅に関する実態調査研究事業報告書」平成25年<クリックで拡大>
24時間365日、ホームに常駐している専任介護スタッフによる介護サービスが受けられる「介護付き(有料老人)ホーム」は、平成18年をピークに徐々に減少しています。一方、介護サービスを外部の事業者が行う「住宅型(有料老人)ホーム」は右肩上がりの増加を続けています。
その要因としては、平成18年から「介護付き有料老人ホーム」を含む“特定施設”は、総量規制で数が制限されるようになってきたことが挙げられます。
その背景には、急激に介護付き有料老人ホームが増え、「要支援」や「要介護1」など要介護度が比較的軽い高齢者も多く入居するようになったことで、介護保険制度の財政への悪影響が懸念されたことがあります。また経営状態の不安定なホームや、悪質なホームが出てきたことも一因にあるようです。ただし総量規制をするかどうかは、地方自治体に判断がまかされており、対応は地域により異なります。
介護付き有料老人ホームを詳しく知る
→ 「介護付き有料老人ホーム」の特徴・メリット・費用
住宅型有料老人ホームを詳しく知る
→ 「住宅型有料老人ホーム」の特徴・メリット・費用
九州・沖縄地方は、老人ホームに入りやすい?
有料老人ホームの運営事業者は、「株式会社」が60.3%を占めています。サ高住も同じく、最も割合が多いのが「株式会社」で54.8%。次は、より小規模と考えられる「有限会社」が有料老人ホーム21.3%、サ高住14.4%。次に目立つのは「医療法人」で、サ高住では同じく14.4%あります。有料老人ホームは6.7%でした。「医療法人」が経営する施設の場合、クリニックを併設したり、医療ケアに力を入れるところが多いという特長があるといえます。
次に、都道府県別の状況を見てみましょう。下の図をご覧ください。

*公益社団法人全国有料老人ホーム協会「有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅に関する実態調査研究事業報告書」平成25年<クリックで拡大>
65歳以上の人口10万人に対する有料老人ホームの定員数では、大分県、宮崎県、福岡県などと九州・沖縄地方が上位を占めています。一方、同じくサ高住の戸数においても沖縄県が上位に来ています。
ところで、沖縄県は“長寿”のイメージがあるかもしれません。平成22年の国勢調査によると、沖縄県の女性は全国3位の87.02歳と確かに高いですが、実は男性は79.40歳で30位とむしろ下のほうです。
男女とも平均寿命第1位なのは、男性80.88歳、女性87.18歳の長野県。同県の有料老人ホームの定員数は26位、サ高住の戸数は32位です。長野県は健康で長生きなので、自宅で最期を迎える高齢者も多いのかもしれません。平均寿命と老人ホームの数に相関関係はないことがわかりますね。
一方、沖縄はもともと移住先としても人気のエリア。温暖で自然にあふれた地域の中で余生を過ごしたい、という高齢者のニーズを見込んで老人ホームが増えていることも予想されます。
最近、高齢者の地方移住の話も増えています。移住を検討する場合は、このような都道府県別の老人ホームの施設数も参考になるかもしれませんね。
こちらの記事も参考にしてください。
→ 同じ日本でも「平均寿命」に10歳の差。長寿村と短命村、何が違う?
→ 長野県が「長寿日本一」になったのには、理由があった?
<構成・文:髙橋光二>
老人ホームや高齢者向け住宅を検討中の方は、こちらのページも、ぜひ参考にしてみてください。
●本人と家族にぴったりの老人ホームを探すには → 良い老人ホームの「見つけ方・選び方」
●介護業界の著名人や有名人にインタビュー → 私が思う「良い老人ホーム」
