9回目を迎えた、“親の介護の最新事情” がわかるシリーズ企画。介護に関わるさまざまな情報を、データを通じて客観的に見ていきます。
「40 代・50 代の親の介護準備状況」を探ってみた8回目に続き、今回は「一人暮らしをしている親は介護についてどう考えている?」がテーマです。
介護が必要になったら、自宅よりも施設
年老いた親が一人暮らしをしているのは、何かと心配なものです。特に家が遠方の場合はなおさらでしょう。一人で暮らす親本人は、将来介護が必要になったらどうしたいと考えているのか、気になるところではないでしょうか。
第一生命経済研究所は、2013年12月、自宅で一人暮らしをする全国の65~79歳の男女527人(介護保険で要支援・要介護の認定を受けていない人)に「単身高齢者の介護準備に関する調査」を行いました。その結果についてご紹介します。
対象者の属性として、「配偶者と死別もしくは離別して、子どもがいるが別居」という人は、65~69歳の場合、43.5%でしたが、75~79歳では75.2%と30%以上もアップしています。加齢とともに、1人暮らしの高齢者の割合が増えていることになります。
まず、下の図をご覧ください。

*第一生命経済研究所「単身高齢者の介護準備に関する調査」2014年<クリックで拡大>
介護が必要となった場合、どこで受けたいかを尋ねた結果です。「身体が虚弱化した場合」と「記憶力・判断力が低下した場合」に分けて尋ねています。いずれも、介護を受けたい場所を、自宅よりも、老人ホームや病院などの施設と回答した人が多くなっています。が、「記憶力・判断力が低下した場合」のほうが、施設入居希望の割合が多くなっています。身体よりも思考能力の低下のほうが、一人で暮らす不安が高まるということの表れと考えられます。
なお、「子どもや親族の家に引っ越したい」は、3~4%と低い数値。4回目でも取り上げたとおり、「家族に負担をかけたくないから施設で介護を受けたい」と考えている人が多くいます。この数値の低さは、「家族に迷惑をかけたくない」思いの表れと受け止めるべきでしょう。
「家族には、自分のことで負担をかけたくない」
そのことは、次の設問回答にも表れています。下の図をご覧ください。

*第一生命経済研究所「単身高齢者の介護準備に関する調査」2014年<クリックで拡大>
介護が必要になったら、誰に介護をしてほしいかを尋ねた結果です。「身体が虚弱化した場合」も「記憶力・判断力が低下した場合」も、「ホームヘルパーなどの外部の介護だけ・外部の介護中心」が84%前後と高い数値。「家族の介護だけ・家族の介護中心」の16%前後の5倍以上と、圧倒的な差がついています。しかも、84%前後のうち、家族なしの「外部だけ」が56~60%近くを占めています。
調査結果の解説においては、次のようにコメントされています。
「1人暮らしをする高齢者のなかには、配偶者等の介護を実際に経験したことによって家族介護の負担を実感した人もいるかもしれません。このような場合、1人暮らしになった後の自分の介護に関しては、子ども等の負担を懸念して外部サービスだけを利用したいと考える人も少なくないのではないでしょうか。」
以上のことから考察できるのは、一人暮らしの親は、子どもなど家族に「自分のことで迷惑をかけたくない」と考えている強い気持ちがあるということです。一人暮らしが心配だからと、同居を提案したり、近くに呼び寄せる子ども世帯も少なくありません。そんな時は特に、こうした親の気持ちを踏まえて接する必要があるといえそうです。
<構成・文:髙橋光二>