介護保険発足当初の2000年には216.5万人だった要支援・要介護認定者数は、2015年7月には614.5万人に。約15年の間に3倍近く増えています(*1)。つまり、要支援・要介護の親を抱えた家族もそれだけ増えているということです。
75歳以上の要支援・要介護者の割合は、2012年の時点で31.4%(*2)。つまり75歳以上の3~4人に1人は要支援・要介護です。
日本人の平均寿命は84歳と世界一の長寿国ですから、夫婦それぞれの両親が75歳以上で存命というのは、平均的な家庭の姿。その場合、その両親4人のうち1人以上が要支援・要介護状態になる可能性が高いといえるのです。
「親の介護や死のことは考えたくない」、「介護のことはよくわからないし面倒」と思う人は多いもの。しかしそれでは「いざ、介護」となった時に、うまく対応できない心配がありますね。
そこで今回から、“余裕を持って親の介護準備をすること”の必要性がわかるシリーズ企画をお送りします。介護に関わるさまざまな状況を、データを通じて客観的に知ろうというものです。
介護の“先輩”はどのように動いたのか。介護施設はいまどうなっているのか。そのような介護の実情を知り、自分の「いざ! 介護」の時のために備えましょう。
介護者は“嫁”から“介護事業者”にシフト傾向
第1回目では、介護者のプロフィールを探ります。
総務省の「社会生活基本調査」によると、15歳以上で家族を介護している人(介護者)は約683万人。男女とも50代および60代が全体の半数以上を占めています。

*男女別年齢階級別介護者数(総務省「社会生活調査」平成23年)<クリックで拡大>
介護者の人数を男女別に見ると、おおむね女性2:男性1の割合。しかし近年では、そのうち、男性のほうが伸びている傾向があります(平成3年から平成23年の間に男性は2.38倍、女性は1.70倍に増加)。働く女性の増加が一つの要因と考えられるでしょう。

*男女別介護者数及び介護者に占める女性の割合の推移(総務省「社会生活調査」平成23年)
また、平成22年の調査では、“要介護者との続柄”は、同居の配偶者が25.7%、同居の子が20.9%、子の配偶者が15.2%を占めています。
このうち、特に変化しているのは、子の配偶者。9年前に比べると7.3%減っています。一方で、介護施設などの事業者は9.3%から13.3%まで増えています。(この場合の子の配偶者は、女性、つまり“嫁”が98.6%を占めています。)
15年前では、主に介護を担っていたのは夫婦のどちらか(老老介護)か“嫁”でしたが、“嫁”は“介護事業者”にシフトしている傾向がわかります。

*要介護者等との続柄別にみた主な介護者の構成割合(厚生労働省「国民生活基礎調査」平成13年、22年)<クリックで拡大>
平均介護期間は“59.1カ月”
育児と違い、介護はいつ終わるのかが見えません。生命保険文化センター(*3)によると、平均介護期間は59.1カ月。平成21年の55.2カ月、平成24年の56.5カ月から、着実に伸びています。年数にして約5年、“見守り”や入院なども含めれば10年ぐらいに及ぶケースも少なくありません。
国は、社会保障費軽減の目的もあり、できるだけ在宅介護にシフトする政策を進めています。しかし、特定の誰かが長期間に渡って介護を“抱え込んで”しまうと、肉体的にも精神的にも厳しい状況に追い込まれてしまいかねません。
そういった実情は、今後このコーナーで紹介していきますが、介護疲れをおこさないためには、介護サービスをうまく利用することが不可欠です。日本には、そのための「介護保険制度」も整備されています。
この連載では、介護サービスの利用データなどもご紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
次回は、「介護経験者に聞く:家族の介護時に困ったことは?」をデータでご紹介します。
*1 厚生労働省「介護保険事業状況報告」
*2 内閣府「平成26年版高齢社会白書」
*3 生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」(平成27年度)