在宅向け介護サービスや老人ホームには、さまざまな種類があります。何を利用したらよいのか迷ってしまいそうですが、一人ひとりの高齢者や家庭の状況に応じて、賢く利用したいものですね。
そこで、在宅サービスや老人ホームを組み合わせて利用する代表的な4つのパターンを紹介し、それぞれのメリット・デメリットを抽出してみました。
もちろん組み合わせ方はさまざまですが、自分の親に最適な介護スタイルの参考にしてください。
【パターン1 高齢者のみの自宅生活型】なるべく自宅での生活を続けるケース
単身や高齢夫婦のみで住む親に、なるべくいままでの在宅生活をキープしてもらうパターンです。住み慣れた自宅で暮らし続けることは、精神面でも費用面でも負担が少ないことが最大のメリットといえるでしょう。

●介護を検討する以前
自宅で夫婦二人暮らし、または一人暮らし
↓
●軽度の介護が必要になったら…
自宅で暮らしながら、訪問介護やデイサービスなどを利用
自宅は介護リフォームで住みやすく改装すると生活がしやすい
↓
●重度の介護が必要になったら…
介護サービスが組み込まれた以下のような施設に転居
・介護付き有料老人ホーム
・グループホーム(認知症向け)
・特別養護老人ホーム
・ケアハウス(介護型) など
メリット・デメリット
・メリット
○ 親が慣れ親しんだ環境で、なるべく長く過ごしてもらえる
○ 自分で家事などをする必要はあるが、それが身体機能の衰えを遅らせることにつながる
○ 比較的、出費は少なくて済む傾向がある
・デメリット
× 高齢者だけで暮らすので、頻繁に安否確認や生活のサポートが必要。また、老老介護の場合、高齢の介護者のケアも必要
× 介護サービスの利用時間や家族のサポートがあるとき以外は、なんでも自分で行う必要がある
× 自宅をバリアフリーに改装すれば、その分の費用がかかる
【パターン2 家族が介護する自宅生活型】家族が在宅で最期まで介護するケース
同居の家族がなるべく最期まで介護するパターン。介護サービスを利用しながら、家族が自分たちの手で親の面倒を見ることができます。
介護の負担はかかりますが、家族ならではのケアが可能。また、親に住み慣れた自宅で過ごしてもらえるメリットも大きいでしょう。ただし、家族が負担を抱え込みすぎないよう、注意が必要です。

●介護を検討する以前
以前から親子で同居(もしくは、介護を機に同居)
↓
●軽度の介護が必要になったら…
子供ができるだけ介護しつつも、積極的に訪問介護やデイサービス・ショートステイなども利用。自宅も介護リフォームで住みやすく改装するのが望ましい
↓
●重度の介護が必要になったら…
訪問介護やデイサービス・ショートステイの利用の頻度を増やす。さらに、訪問入浴や訪問看護・訪問診療を利用していない場合は、それらも追加で利用を検討
メリット・デメリット
・メリット
○ 親が慣れ親しんだ環境でなるべく長く過ごしてもらえる
○ 親をすぐ近くで見守ることができる
○ 親は子供に見守られて安心できる
○ なるべく自宅で過ごせれば、比較的費用はかからない傾向がある
・デメリット
× 介護する負担(時間、手間、精神的負荷)がかかるため、介護者のケアも必要になる
× 親にとっては、子供に迷惑をかけてしまうと精神的負担がある
× 介護の知識や技術がある程度必要になる
× 自宅をバリアフリーに改装すれば、その分の費用がかかる
【パターン3 要介護で施設転居型】介護が必要になった時点で老人ホームに入居するケース
介護が必要となった時点で、老人ホームへ転居するパターンです。親にとっては、要介護となっても家族に負担をかけず、プロの介護が受け続けられる安心感があります。また、他の入居者と施設の生活を楽しめる側面もあります。

●介護を検討する以前
高齢者が自宅で夫婦二人暮らし、または一人暮らし。もしくは子供と同居
↓
●軽度・重度に関わらず、要介護の認定を受けたら…
介護が組み込まれた以下のような施設に転居
・介護付き有料老人ホーム
・グループホーム(認知症向け)
・特別養護老人ホーム
・ケアハウス(介護型) など
メリット・デメリット
・メリット
○ 家族の介護の負担が少ない
○ 介護のプロに常時見守ってもらえるので安心できる
○ 遠距離や多忙だった場合も、安心してまかせられる
○ 日々の介護はプロにまかせる分、心に余裕を持って親に接することができる
○ 親は、同世代・同立場の仲間がつくりやすく、レクリエーションなどで楽しい時間が持てる
・デメリット
× 比較的費用がかかる傾向がある
× 親の生活環境が変わるので心配。集団生活が苦手な高齢者には負担
× 日常生活がラクになり刺激が少なくなると、急速に身体機能が衰える場合がある
× 人間関係がうまくいかないと、親につらい思いをさせてしまう
× 条件に合う老人ホームを探すのに、情報収集や見学の手間・時間がかかる
【パターン4 早期に施設転居型】元気なうちから高齢者向け住宅に入居するケース
まだ介護は不要という早い段階から、高齢者向け住宅や老人ホームに入居するパターンです。高齢者向けならではの配慮や見守り、支援サービスの中で、生活をエンジョイできます。
ただし、施設では対応できない医療ケアが必要になったときなどには、退去しなければならない場合も。また、頻繁に介護が必要な状態になると、外部の介護サービスを利用する形式では料金が高くつくこともあります。

●介護を検討する以前
自宅で夫婦二人暮らし、または一人暮らし
↓
●介護は不要だが、将来に備えて老人ホーム・高齢者向け住宅に入居
介護サービスが料金にセットされていない、以下のような高齢向け住宅・老人ホームに転居
・サービス付き高齢者向け住宅
・住宅型有料老人ホーム
・シニア向け分譲マンション など
↓
●軽度の介護が必要になったら…
そのまま高齢者住宅・老人ホームで過ごしながら、必要に応じて訪問介護やデイサービスなど外部の介護サービスを利用
↓
●重度の介護が必要になったら…
重度になったり頻繁に介護が必要になり、そのまま住み続けることが難しくなったら、常時介護が受けられる以下のような老人ホームに転居
・介護付き有料老人ホーム
・グループホーム(認知症向け)
・特別養護老人ホーム
・ケアハウス(介護型) など
メリット・デメリット
・メリット
○ 親に安心した生活を送ってもらえる
○ 24時間何らかのかたちで見守ってもらえるので安心
○ 親は元気なので、自ら気に入った高齢者住宅・老人ホームを選んでもらえる
○ 親は同世代・同立場の仲間がつくりやすい
・デメリット
× 比較的費用がかかる傾向がある
× 親の生活環境が変わるので心配
× 要介護度が重くなった場合の再転居の負荷がかかる
まとめ
上記は代表的な4パターンです。上に挙げた以外にも、多種多様なパターンが考えられます。親の状況がいつどのように変化するかは、予測困難なもの。身近にどういった介護サービスや老人ホーム・高齢者向け住宅が存在しているかを調べておけば、いざという時に困らずに済むでしょう。