高齢者が暮らす場所である老人ホームや高齢者向け住宅。しかし、その種類はさまざまです。
特別養護老人ホーム、介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、グループホーム、サービス付き高齢者向け住宅、シニア向け分譲マンション……たくさんありすぎて混乱してしまう人も多いのではないでしょうか。
どんな種類があるのかを確認しておきましょう。
老人ホームの種類を費用と要介護度で考える
老人ホーム・高齢者向け住宅の種類はさまざまありますが、それぞれに特徴や入居の条件があります。
条件次第では、最初から検討対象外となる施設もあるでしょう。
ここでは介護をする子供の立場として、まずおさえておくべく2大テーマ、“費用”と“要介護度”の軸で、老人ホームの種類を分布してみました。この2つの軸の関係を表したものが下記の図です。

費用=どれぐらいのお金が使えるのか(生活レベルやライフスタイルの条件)
要介護度=どの程度の介護サービスが必要なのか(生活上の物理的な制約)
この2つの軸の相関関係で、最適な老人ホーム、高齢者向け住居を選ぶことになります。
ただし、上記のように大まかには分けられますが、同じ種類の中でも特徴や違いがあります。
たとえば、介護付き有料老人ホームの中にも、費用が安い施設や自立の人向きのものもあります。詳細は、それぞれの施設情報を確認するよう、注意してください。
主な老人ホーム・高齢者向け住宅の種類
では、実際の老人ホーム・高齢者向け住宅の種類ごとにはどんな特徴があるでしょうか?
それぞれの種類ごとの概要を、順に紹介していきます。
介護付き有料老人ホーム

介護保険が適用される「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた有料老人ホーム。施設内の介護スタッフから生活・介護サービスが提供され、「有料老人ホーム」の形態としてはもっとも一般的です。看護師が常駐する施設も多く、生活のサポートと安心感が得られます。
ホームによっては、「要介護」であることが入居条件で、「自立」や「要支援」だと入居できない場合もあります。
<介護付き有料老人ホームはこんな場合におすすめ>
・在宅介護はできない状態だが、親が自立した生活を営めなくなった場合
・家族が同居して介護中だが、親の介護を続けることが困難になった場合
・特別養護老人ホームなど公的な施設に入居を希望しているが、待機者が多いなどで目途がたたない場合
・将来、親に介護が必要となったとき、家族ではなくプロの介護サービスを受けたい場合
●介護付き有料老人ホームの特徴について詳しくはこちら、費用について詳しくはこちら
住宅型有料老人ホーム
「特定施設入居者生活介護」の指定を受けていないタイプの有料老人ホーム。 施設内のスタッフからは食事などの生活サービスは提供されますが、入浴や排泄介助などの介護サービスは受けられません。
必要になった時には、入居者が個々に外部の在宅サービス(訪問介護など)を利用します。なお、外部サービスとはいえ、訪問介護スタッフは隣接する建物にいることが多く、サービスを受けるのはスムーズです。もちろん、その他の事業所を選択することも自由にできます。
自立して暮らせる方や、要介護度が軽めの方に向いています。自宅のような感覚で、自由度の高い暮らしができる場合が多いでしょう。
<住宅型有料老人ホームはこんな場合におすすめ>
・親が元気なうちから、万が一のときに安心できる環境にいてもらいたい場合
・親が「いかにも介護」という老人ホームには行きたくないという場合
・親が同世代の人と交流を深めて、アクティブに豊かに暮らしたいという場合
●住宅型有料老人ホームの特徴について詳しくはこちら、費用について詳しくはこちら
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

高齢者が安心して暮らせる賃貸形式の住宅。居室の広さ(床面積25㎡以上)やバリアフリーなど建物の仕様が一定基準をクリアしていること、安否確認と生活相談サービスが提供できることなど、決められた要件を満たしています。
介護サービスが必要になった時には、入居者が個々に外部の在宅サービス(訪問介護など)を利用します。
自立して暮らせる方や、要介護度が軽めの方に向いています。すべての人が介護を受けるわけではないので、普通のマンションに近い雰囲気であることも多く、自由度の高い暮らしができます。
中には「特定施設入居者生活介護」の指定を受けているサ高住もあります。
<サービス付き高齢者向け住宅はこんな場合におすすめ>
・親が元気なうちから、万が一のときに安心できる環境にいてもらいたい場合
・親が「老人ホーム」には行きたくないが「高齢者向けマンション」なら、という場合
・親が同世代の人と交流を深めて、アクティブに豊かに暮らしたいという場合
●サービス付き高齢者向け住宅の特徴について詳しくはこちら、費用について詳しくはこちら
シニア向け分譲マンション
一般の分譲マンション同様に“購入”して利用するタイプ。「介護」というより「シニアの豊かな暮らし」という視点で設計されていることが多く、大浴場やレストラン、図書室、トレーニングジムなどホテルのような付帯施設を併設しているところも。
介護サービスについては、必要なときに外部サービスを利用します。
<シニア向け分譲マンションはこんな場合におすすめ>
・豊かに快適に老後を過ごしたいというという親の場合
・親が元気なうちから、万が一のときに安心できる環境にいてもらいたい場合
・親が「老人ホーム」には行きたくないが「高齢者向けマンション」なら、という場合
・親が同世代の人と交流を深めて、アクティブに豊かに暮らしたいという場合
●シニア向け分譲マンションの特徴について詳しくはこちら
高齢者向け住宅
法律の規定上、有料老人ホームや、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、そのほかの福祉施設などに分類されないものの総称。建物のつくりに配慮があったり、生活支援サービスがあるなど、高齢者に向けて住みやすく配慮された住宅全般を指します。
法律上の明確な基準がないので、「何が高齢者向けなのか」の定義は特にありません。介護サービスは組み込まれていないので、必要な時に外部サービスを利用します。
<高齢者向け住宅はこんな場合におすすめ>
・親が元気なうちから、万が一のときに安心できる環境にいてもらいたい場合
・親が「いかにも介護」という老人ホームには行きたくないという場合
・親が同世代の人と交流を深めて、アクティブに豊かに暮らしたいという場合
特別養護老人ホーム(特養)

介護老人福祉施設とも呼ばれます。老人福祉法によって制度化された高齢者用の福祉施設。要介護度の重い人の援助を目的にしています。
入居できるのは、原則として65歳以上で要介護度3以上の人。また、介護の必要度が高く家庭では負担しきれない人が入居対象。
費用が低額のため需要は大きいものの、入居までに時間がかかることもある現状です。
<特別養護老人ホームはこんな場合におすすめ>
・親の要介護度が高く、在宅介護が困難な場合
・できるだけ費用を抑えて入居できる施設を希望する場合
・老人ホームを終の棲家としたい場合
●特別養護老人ホームの特徴について詳しくはこちら、費用について詳しくはこちら
グループホーム
認知症を持つ人が、介護スタッフのサポートを受けながら、少人数で自立した共同生活を行う施設。入居者一人ひとりの能力に応じて洗濯、掃除、食事準備の手伝いなどをして暮らすので、家庭のようなアットホームな雰囲気です。
これにより認知症の症状を緩和したり、進行を遅らせるなどの狙いもあります。
<グループホームはこんな場合におすすめ>
・家族による在宅介護が難しく、認知症の親が自立した生活が営めなくなった場合
・家族が同居して介護中だが、認知症の親の介護を続けることが難しくなった場合
・認知症の知識を持つ介護スタッフに専門的なケアをして欲しい場合
●グループホームの特徴について詳しくはこちら
ケアハウス・軽費老人ホーム
地方自治体や社会福祉法人などが運営主体。住まいに困難を抱える高齢者を援助する目的で設けられた「社会福祉施設」のひとつ。法律的にも社会福祉法の下に置かれ、その主旨から、安い利用料で生活サービスが受けられます。
本来は介護よりも生活サポートに重点が置かれた施設ですが、介護を提供するケアハウスと呼ばれるタイプもあります。
<ケアハウス・軽費老人ホームはこんな場合におすすめ>
・親が低所得である場合
・親とは事情により同居できない、援助ができない場合
*管轄の自治体によって、条件が異なります。
●ケアハウス・軽費老人ホームの特徴について詳しくはこちら
上記は種類ごとの概要です。前述の通り、実際には同じ種類の中でも特徴に違いがありますので、注意してください。
●老人ホームについての種類については、下記のページも参考にしてください。
→老人ホームの種類を知る