親の介護をするとき、ほかの家族の状況を確認しておくことが、介護の場所や方法を決める大きな判断材料になります。
離れて暮らしていると、家族であっても知らないことが意外に多いはず。まず、以下の点を確認・整理しましょう。
・あなたには、配偶者や兄弟姉妹がいるのかいないのか。
・配偶者や兄弟姉妹は、仕事をしているのか否か。
・親とあなたは、同居なのか別居なのか。
・別居の場合、親の家とは近いのか遠いのか。
・遠い場合、親を自宅に呼び寄せられるのか否か。
・親の家の近くに、ほかの家族や親戚がいるのかいないのか。
家族の状況を整理するには、家系図(配偶者がいる場合は両家の)を書き出し、そこに年齢や健康状態、仕事の勤務体系・勤務時間帯などを書き込んでみるとわかりやすいと思います。
この時、おじやおばがいれば、それも書いておくことをお勧めします。なぜなら、おじやおばに、ほかに身寄りがいない場合、今後、自分が介護(の手配)をすることになる可能性があるからです。
「介護への考え」や「実現の可能性」を話し合う
整理すべき家族の状況とは、家族それぞれの「介護を行うことに対する意向や実現の可能性」、「介護に割ける時間帯」などです。
兄弟姉妹は親の介護を分かち合う存在です。どこに住んでいるかにもよりますが、役割分担について話し合っておきましょう。
例えば、親の家の一番近くに住む長女ができるだけ介護事業者の手を借りながらも中心となって対処し、遠方に赴任している弟は費用負担を多くする、といったことが考えられます。
兄弟姉妹が数年ずつ持ち回りで交代する、といった考え方もありますが、介護される親にしてみれば、数年おきに環境が変わることを煩わしく思う可能性も高いです。
また、配偶者は、義理の親の介護を嫌がる可能性があります。逆に、「嫁に介護をされたくない」という親も少なくありません。
専業主婦だから時間があるだろう、と親の介護を無理強いすると、夫婦仲に亀裂が入るリスクもあるため、お互いの意思確認をしておくことも必要でしょう。
老老介護、遠距離介護、シングル介護など、介護スタイルごとのポイントについては、下記の記事が参考になりますのでチェックしてみてください。
●老老、遠距離、シングル介護etc家族の関わり方
話し合いなく同居を決行して失敗した事例
Aさんが、地方で一人暮らししている親が心配だからと、自宅の一部を改装し呼び寄せて同居を始めました。
地方の親の近所には弟が住んでいましたが、独身で当てにはならず、「大事な親を施設などに入れたくない」と思ったからです。その人の妻は心配しましたが、押し切りました。
しかし、いざ同居が始まると、環境が変わったことで親は体調を崩し、介護が必要な状態になってしまったのです。しかも嫁に介護されることを嫌がり、地元に帰りたいと言い始めます。
仕方なく地元の施設に入居させざるを得なくなり、遠い親の地元での施設探しに多大な時間を取られてしまいました。その上、自宅改装費用もムダになってしまったのです。
こういった事態になったのは、Aさんの「同居こそ安心」、「親は同居を喜ぶはずだ」という思い込みと、事前の話し合いもなく決行してしまったからです。同居すれば常に状態が確認できるので安心の部分もありますが、お互いに“逃げ場”がなくなることによりストレスが生じることも多いのです。
また、長年住んだ場所から移住することは、親にしてみればそれだけでストレスフルなことであり、一気に認知症になってしまうといったことにもなりかねません。
Aさんの場合は、最初から地元の施設入居にするか、呼び寄せるにしてもいきなり自宅を改装しない方がよかったかもしれません。さらに言えば、近くに住む弟ともじっくり相談しておくべきでした。
まだ介護がそれほど必要な状況でなかったのなら、弟にたまに様子を見に行ってもらいながら、親は自宅で在宅介護サービスを利用して生活することもできたでしょう。また、施設入居を嫌がるようであれば、賃貸型のサービス付き高齢者住宅にいったん入居してもらい、施設での暮らしに馴染めるかを確認するという方法もあります。
自分の考えだけでなく、兄弟の考えや本人の意向もしっかり聞くことで、できるだけ理想に近い介護をすることができますし、Aさんのケースであれば無駄な出費や時間を抑えることができたでしょう。
だからこそ、「親との事前の話し合い」や「家族の状況の確認・話し合い」が不可欠なのです。