筋肉や骨、関節、軟骨、椎間板、末梢神経などは、人が身体を自由に動かすために不可欠の「運動器」と総称されます。
この運動器のうち、特に、骨、関節、筋肉の3部位に加齢などで障害を来す状態を「ロコモティブシンドローム(運動器症候群、略称:ロコモ)」と呼んでいます。
中でも、筋肉量が減少する症状を「サルコペニア」といいます(ギリシャ語で「サルコ」は筋肉、「ぺニア」は減少の意味)。
要介護や寝たきり状態となる原因の多くは、この「ロコモ・サルコペニア」が占めています。したがって、健康寿命を伸ばすためには、“ロコモ・サルコペニア対策”が必要不可欠なのです。
厄介なことに、骨、関節、筋肉の機能低下は、それぞれが密接に関わり合い、悪循環を起こしながら進みます。
まず、加齢で筋肉量が低下すると、ひざの関節の負荷が高まります。すると、どうしても運動不足となり、体重が増えがちになり、そしてひざへの負担がさらに増す、という悪循環をたどるのです。
さらに、筋肉量の減少で転びやすくなり、運動不足や栄養不足などで骨の強度も低下していれば、骨折してしまう危険性が高くなります。
もし骨折すると運動量はさらに減少するので、筋肉量もさらに減少するという、ここでも悪循環となるのです。
合成と分解を繰り返す筋肉を維持・増加させる
では、“加齢”による「サルコペニア」はどうして、どのように進むのでしょうか。
まず、人の下肢の筋肉量は10代にピークとなり、40歳の頃から減少が目立ち始めます。その後、高齢になるほど減少傾向は強まります。
筋肉は“筋トレ”などの運動やタンパク質、アミノ酸などの栄養分を摂ることで維持・増加します。
人間の筋肉は合成と分解を繰り返しており、10代の成長期にはこの合成と分解がバランスよく進み、十分な栄養分と運動による刺激により筋肉量は増加するのです。
ところが、高齢者ともなると運動量や栄養分の摂取量が減ることに加え、運動などの刺激への感応度も低下することから、筋肉の合成と分解のバランスが崩れて筋肉量が減少してしまうのです。
逆にいえば、筋肉量を維持もしくは増加させることが、この悪循環を断つことの決め手になることもわかるでしょう。
骨、関節、筋肉の細胞の半分が入れ替わる期間は、骨は7年、関節や軟骨は117年。それに対して筋肉のタンパク質は48日と短く、すぐ効果を出しやすいというメリットもあります。
ロコモ・サルコペニア対策のための運動
「ロコモ・サルコペニア対策」を推進しているアクティブシニア「食と栄養」研究会は、運動と食生活による次のような対策を推奨しています。
(1)片脚立ち
転倒しないように手すりや机などで体を支えながら、左右の片脚を1分間ずつ、床から離す程度上げます。これを1日3回行います。
(2)スクワット
肩幅より広めに足を広げて立ち、つま先を30度ほど広げます。ひざがつま先より前に出ないように注意しながら、ひざの方向を足の指と揃え、お尻を後ろに引くようにして体を沈めます。
これができない場合は、椅子に腰かけて机に手をつき、立ち座りを繰り返すやり方でもかまいません。
この間、息は止めず、ひざへの過剰な負担を避けるため90度以上曲げないようにします。
この運動を深呼吸のペースで5~6回、1日3回行います。
それ以外にも、いくつか運動メニューがあります。詳しくは下記サイトを参照してください。
「ロコモ」を調べて予防しよう(ロコモチャレンジ!)
“5大栄養素”をバランスよく摂る
次に、食生活について。運動器の機能を保つのに欠かせない栄養素は、炭水化物、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルの“5大栄養素”。これらの栄養素を、毎日3回の食事からバランスよく摂取することが大切です。
なお、同研究会は「骨を強くする食生活」「筋肉を強くする食生活」について下記サイトで紹介しています。
「ロコトモ」を調べて予防しよう(ロコモチャレンジ!)
ちなみに、食生活のポイントについて、農林水産省は10項目の「食生活指針」を推奨しています。併せて参考にしてください。
「ロコモ・サルコペニア対策」を知っておけば、「少し運動しておこう」「栄養のバランスに気をつけよう」と意識することができます。ぜひ関心を持つことから始めてください!
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