日本では、2000年に“国民すべてで高齢者の介護を支え合おう”という主旨の「介護保険制度」が導入されました。以来、介護を必要とする方の介護サービスを保険で給付する形で支援が続けられてきました。
その後、軽度の要介護認定者の増加に対し、要介護状態となることを予防するため、2006年の介護保険法改正の際に、保険料も財源として、地域支援事業で「介護予防事業」を行うことが盛り込まれたのです。
この法改正により、市区町村単位の各自治体には、それぞれの住民に対して各介護予防事業を行うことが定められました。あなたがお住まいの自治体でも必ず行われています。ぜひチェックしてみましょう。

介護予防プログラムには、「一次予防事業」と「二次予防事業」があります。
●一次予防事業
<対象>第1号被保険者(65歳以上)のすべての方
「元気なうちから対象のプログラムに参加でき、生活機能の維持・向上を図る」
●二次予防事業
<対象>要介護状態になるおそれのある第1号被保険者(65歳以上)の方
「要介護状態になることの予防を図る」
二次予防事業の対象者は、「1人で外出していますか?」「15分くらい続けて歩いていますか?」「口の渇きが気になりますか?」といった25項目からなるチェックリストで判定され、一定の条件に該当した方が参加することができます。
では、どんなプログラムが行われているのでしょうか。
ここでは、東京都世田谷区の「一次予防事業」をご紹介します。
介護予防効果のある「筋力アップ体操」が人気
世田谷区の人口(約87万4千人)は東京23区では第1位。面積(約58.08㎢)は大田区に次いで2番目の広さです。その同区には区内27か所の「あんしんすこやかセンター(地域包括支援センター)」が設けられ、地域の高齢者の相談に対応しています。そして、同センターにおいて、介護予防の普及啓発を目的として「はつらつ介護予防講座」と「まるごと介護予防講座」が行われています。

「はつらつ介護予防講座」では、介護予防のヒントについての講話と、イスに座ってできる筋力アップ体操などを区内27ヶ所で月2回行います。「まるごと介護予防講座」は、“動くこと”と“食べること”、“認知症について”などの講話と、簡単な筋力アップ体操による6回の講座を年20回行うプログラムです。
「どちらも筋力アップ体操が盛り込まれている理由は、要介護状態となる原因が、骨折や関節の病気などが多いからです。また、加齢とともに足腰の筋力が衰え、体を動かすことが億劫になり、気持ちが前向きにならず食欲も出ない、といった悪循環にもなるため筋力を維持することが大切です。参加される皆さんはこの体操を楽しみにされていますね」と世田谷区高齢福祉部介護予防・地域支援課係長の河島貴子さんは説明します。
この体操講座はスポーツクラブの事業者などに業務委託され、プロのインストラクターが指導に当たっています。
ある日の「はつらつ介護予防講座」には30人ほどの高齢者が集まり、熱心に体操に取り組んでいました。なお、この「イスに座ってできる筋力アップ体操」は、転倒などしないよう高齢者の安全を考えて考案されています。こうした配慮もうれしいですね。
一度、地元の介護予防講座を見学にいってみてはいかがでしょうか。