“日本人の国民食”ともいえる、カレーライス。前回は、そのカレーに動脈硬化を予防する抗酸化物質がたくさん含まれていることについてご紹介しました。
実は、それだけではありません。カレーを黄色く色づけるスパイスとして欠かせないターメリック(熱帯ウコン)の主成分であるクルクミンに、認知症のなかでいちばん多いアルツハイマー病を抑制する効果が認められたという研究結果*があります。
(*出典:Journal of Alzheimer’s Disease誌)
アルツハイマー病の原因はまだ特定されていませんが、患者の脳細胞にアミロイドβタンパク質が蓄積することで生じるということが解明されつつあります。
カリフォルニア大学デヴィッドゲフィン医学校のミラノ・フィアラ氏らの研究チームは、以下のテストを行いました。
●6人のアルツハイマー病患者と、3人の健康な人から「マクロファージ*(白血球の一種)」を採取
(*アミロイドβを含む廃棄物を取り込んで処理する免疫細胞)
【テスト1】
6人のアルツハイマー病患者のマクロファージのうち3人のものをクルクミンで処理し、処理していないものと比較
→クルクミンで処理したものは、処理していないものに比べて「アミロイドβの処理力が改善」
【テスト2】
健康な人のマクロファージをクルクミンで処理
→すでにアミロイドβは取り除かれていたので変化なし
このテスト結果から、クルクミンは特定のアルツハイマー病患者の免疫システムの働きを高める効果があることが示されたのです。
クルクミンが毒性を分解
同様の研究はほかにもあります。アルツハイマー病は、脳の中でアミロイドβが線維状に結合して毒性を持ち、周囲の神経細胞を殺してしまうことで起こることがわかってきています。
金沢大学大学院の神経内科の山田正仁教授と小野賢二郎医師らの研究チームは、線維化したアミロイドβを含む溶液にクルクミンを加えたところ、線維が分解したことを確認しました。
武蔵野大学は、アメリカのソーク研究所との共同研究で、動物実験の結果、クルクミンが記憶力を高める効果があることを確認しています(読売新聞2008年8月19日)。
どうやら、ターメリックを大量に含むカレーライスは、アルツハイマー病の抑制につながる食べ物と言えるようです。みんなが好きな食べ物にそんな効果が認められるなんて、うれしいことですね。