肺炎の治療は、抗菌剤(抗生物質)を使う薬物治療が中心になります。入院が必要な場合は入院して点滴による投薬が行われます。外来通院と自宅療養でよい場合は、経口薬が使われることが多いです。入院時は点滴による投薬が行われます。
<監修:上條内科クリニック 院長・医学博士 上條武雄/文:椎崎亮子>
肺炎で入院が必要なとき
医療機関で肺炎の診断が降りたら、重症度によって外来通院治療か入院治療かが決められます。重症度は、図3の指標を使って判定されます。

意識障害については、認知症や脳の機能障害がある場合には、肺炎によって悪化しているかどうかを、医療者が簡単なテストをして判断します。もし、認知症などがある方が普段かかっていない医療機関で診察を受ける場合には、介助する家族などが普段の反応と違うかどうかなどを医療者に的確に伝える必要があります。
この指標以外にも、呼吸数や肺のX線写真像によって重症度の判断が変わる場合もあります。
的確な薬物治療のために患者側が知っておくべきこと
肺炎は、原因となっている微生物によって、使われる抗菌薬等が違ってきます。しかし、原因菌をはっきり特定するには痰の培養などが必要で、どうしても時間がかかります。肺炎では発病からできるだけ早く薬の投与を開始することが必要ですので、定型肺炎(肺炎球菌他の細菌による肺炎)か非定型肺炎(ウイルスやその他微生物による肺炎)かを判断して重症度に応じた治療を開始します(表4参照)。そのうえで、原因菌が特定された時点で薬を変更する場合もあります。

医師は、薬がどのように効果を発揮しているかを慎重に見極めながら治療を進めています。抗菌薬は、できるだけ短期間で効果をあげ、治療を終了することが望ましい薬だからです。患者・家族側は以下の点を守ることで、より的確な治療を受けられます。
(1)基礎疾患(=持病。特に糖尿病、腎臓、肝臓、心臓、肺の疾患)がある方は、軽重を問わず必ず医師に申し出ます。
(2)外来・入院どちらの場合も、普段使っている持病などの治療薬を必ず医師に伝えます。肺炎の治療薬と相互作用を起こす場合があるからです。お薬手帳を持参するのが確実です。
(3)最近、抗菌薬を使う治療をしたかどうかを医師に伝えます。皮膚科、眼科、歯科で治療を受けたり、風邪で薬を処方されていた場合は抗菌薬を使った可能性があります。
(4)外来治療時は特に、薬の飲み忘れや、症状が無くなったからなど自己判断による中断をしないよう注意します。中途半端に抗菌薬を使うと、再発したり、「薬剤耐性菌」を作ってしまう危険があります。薬剤耐性菌は、文字通り薬が効かず、治療が難しくなります。
高齢者の治療の注意点
高齢者や腎臓・肝臓の機能が弱っている方では、副作用が強く出る場合があります。若い時と違って、薬が体の中で代謝される速度などが落ちているためです。
下痢、尿が出にくい、めまいなどを訴えるなどの変化があったら、すぐに主治医に相談してください。
家庭での療養は?
何よりも安静が大切です。また患者の居室内は保温・保湿し、清潔を保ちます。外部の方のお見舞いなどは医師の許可があるまで遠慮するようにします。細菌性の肺炎が他人にうつることはありませんが、インフルエンザ等のウイルス性肺炎、マイコプラズマ肺炎は他人にうつります。また、肺炎を起こすということは感染しやすくなっているということですので、外部から菌が持ち込まれることも防がなければなりません。看護する家族も、手洗いやマスク着用などに気をつけます。
体力を消耗しますので、消化のよい食事をできるだけ摂るようにします。脱水しないよう、水分補給についても医師や看護師の指示があれば従います。特に高齢者で食欲がなくなってしまった場合、誤嚥がある場合は、主治医に相談して点滴などの処置をとってもらいます。
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