「小さな兵隊が行列を組んで歩いている」「天井に芋虫がびっしり張り付いていて気味が悪い」――。実際にはいないものが見えると言って興奮する認知症の患者さんがいます。いずれも、幻覚です。体調が悪いときや夜中に見えることが多いようです。その場に居合わせたら、本人の訴えに耳を傾けましょう。そして、例えば「どんな兵隊がいるの?」などと話を合わせましょう。話を聞いてもらうことで興奮が収まる場合もあります。
本人には見えています
周りには見えなくても「本人には見えている」のですから「そんなもの見えるわけないでしょ!」と頭ごなしに否定してはいけません。
興奮しているときには、それを追い払ったりするそぶりをするのはOKです。しかし、話のつじつまを合わせようとするあまり、うかつに「いるよね」と口裏を合わせるのはタブー。間違いを認めることになるからです。壁のシミなど、幻覚を招くものがあれば、取り除いておくことも予防になります。
集めるのが“仕事”です
認知症になると、他人にとってはまったく価値のないごみやガラクタなどを集めて、大事にしまい込む行動をとる患者さんがいます。空き缶や袋、ひも、石ころなど、患者のこだわりによって集められるものはさまざま。
多くの場合、患者さんは集めたもので何かがしたいのではなく、集めること自体を仕事のように考えているのです。危険を伴うものでない限り、好きにさせておいて、時々チェックするようにしましょう。
捨てるときは少しずつ、こっそりと
「こんなもの邪魔でしょ!」「汚いでしょ!」「さっさと捨ててきて!」などと叱りつけるのはよくありません。しかし、不衛生なものや腐ってしまう食料品などが混じっていれば話は別。できるだけ、本人に気づかれないように、少しずつ片付けましょう。
腐敗したものを口にして食中毒を起こしたら大変です。認知症の患者さんは集めることには熱心ですが、始末されたことは気にかけないことが多いので、じょうずに処分しましょう。
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