帯状疱疹 第4回 皮膚の症状が消えたのに痛みが続く
帯状疱疹後神経痛の原因と治療
帯状疱疹は、通常3~4週間で治ります。しかし、皮膚の症状が治ったあとも皮疹の出たあとに沿って痛みが長期間続くことがあります。これが「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれる痛みです。症状は治ったのに、なぜ痛みが続くのでしょうか。
<監修:上條内科クリニック 院長・医学博士 上條武雄/文:星野美穂>
高齢になるほど発症しやすい帯状疱疹後神経痛
帯状疱疹の痛みは、神経がウイルスにより痛めつけられることで起こります。抗ウイルス剤による治療が遅れると、神経は長時間ウイルスの攻撃にさらされることになります。そのため、神経には修復不能な傷がつき、辛い痛みが残ってしまうのです。
帯状疱疹を経験した人のなかで帯状疱疹後神経痛を発症する人は年齢とともに増加します。帯状疱疹に罹った人のうち50歳代では50%、60歳代で60%、70歳代で70%が帯状疱疹後神経痛を発症するといわれます。
また、帯状疱疹の痛みが激しかった人、皮疹がひどかった人、治療が遅れた人、免疫力が低下した人なども帯状疱疹後神経痛になりやすいといわれています。
通常の鎮痛剤は効果が少ない
帯状疱疹後神経痛の痛みは、「ズキズキ」「ヒリヒリ」「針で刺されるような」「電気が走るような」など、さまざまに表現されます。痛みの感覚もずっと続く痛みもあれば、切りつけられるような痛みを繰り返すこともあります。
このような帯状疱疹後神経痛の痛みに対しては、頭痛などのときに使用する消炎鎮痛剤はあまり効果がありません。
現在、第一選択薬として使われているのは、「リリカ」という薬です。リリカは2010年に発売された比較的新しい薬で、帯状疱疹後神経痛に適応を持ち、国際疼痛学会のガイドラインでは帯状疱疹後神経痛の第一選択薬として位置づけられています。
また「ノイトロピン」という薬もよく使われます。ノイトロピンはぎっくり腰など急性の痛みにはあまり効果はありませんが、慢性の痛みには力を発揮する薬です。
最善の治療は「予防」
このほか、抗うつ薬や抗けいれん薬、抗不整脈薬などが使われることがあります。これらは日本の健康保険制度では正式には使用が認められていません(適応外使用)が、帯状疱疹後神経痛に長年使われており、人によっては高い鎮痛効果を示します。内服薬で痛みがとれないような場合は、神経ブロックを行います。
帯状疱疹後神経痛は治療が難しく、さまざまな方法を組み合わせて治療を行うこともあります。
もっとも大切な「治療」は、帯状疱疹後神経痛を起こさないことです。そのために帯状疱疹にかかったら、少しでも早く医療機関に行って治療を開始することが重要です。また治療中は無理をせず、しっかりと休養をとりましょう。
【参考】
横浜市衛生研究所
日本医師会健康の森
大規模帯状疱疹疫学調査「宮崎スタディ」
●「高齢者のかかりやすい病気・疾患」の一覧を見る
●「在宅医 ドクター上條に聞く」のコーナーをすべて見る