たった今、食事をしたばかりなのに「ご飯はまだ?」「朝から何も食べていない」などと繰り返し食事を要求するのも認知症によくみられる症状です。食べたことそのものを忘れていたり、満腹を感じる脳の働きが侵されていたりするのが原因です。患者さん本人に食べた記憶がないのですから「さっき、食べたばかりでしょう?」といくら言葉で言っても納得してくれません。むしろ、どうして食べさせないのかと怒り出すこともあります。
軽いお菓子で気持ちを満たす
たび重なる要求に対しては食事したことを納得させるよりも、これから食べられるという安心感を与えるほうがベター。「ちょっと待っててね」と台所に向かったり、時計の針を指差して「針がここまで来たらご飯ね」と言葉をかけたりするとよいでしょう。それでも要求する場合には、長持ちする飴玉や少量のお菓子などを与えて気持ちを満たしてあげることが大切です。たとえ事実でも「いま、食べたばかりでしょ!」はNGワードです。
ボタンを食べたことがありますか
同じ「食」に関係する症状で、よくあるのが周りのものを手当たり次第に口に入れてしまう「異食」です。ボタンや硬貨、乾燥剤、せっけんなど、なんでも食べてしまいます。ハイハイし始めた乳児がなんでも口にするのに似ています。食べてよいかどうかを区別できないことが引き金になります。認知症の患者さんは味覚が低下していることが多いので、異物でも疑わないのです。口にすると危ないものは身の回りに置かないようにしましょう。
患者さんをビックリさせないで
異食の恐れのあるものは目に付かない所や手の届かない所、鍵のかかる所にしまいましょう。異食に気づいたら、他の食べ物を与え、口にしているものを交換してもらいます。決して大声を出したり、無理に吐き出させようとあせったりしてはいけません。驚いた患者さんが誤って飲み込んでしまうこともあるからです。周囲に気づかれずに異食している場合もあるので、腹痛や嘔吐など、患者さんの健康状態に常に注意を払うことも大切です。
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