すべての病気と同じように、食中毒も予防することがなにより大切です。特に家庭では、原因となる菌やウイルスを極力口に入れずに済むように考えます。
食中毒予防の三原則、食中毒菌を「付けない、増やさない、殺す」を守ることで、家庭での食中毒の発生を防ぎます。
<監修:上條内科クリニック 院長・医学博士 上條武雄 / 文:椎崎亮子>
*「高齢者の食中毒」の1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)を読む
高齢者はとくに食中毒に気をつけたい
高齢者はとくに、食中毒にかかりやすく、かかった場合には重症化しやすい傾向があります。免疫力が弱っていることが多いからです。家族と同じものを食べたのに、高齢者だけが食中毒の症状をおこすこともあります。
高齢者では配食サービスなどを受けることも多いですが、調理して時間がたった弁当の残りなどを「もったいないから」と食べたりしないよう十分注意し、残り物は早めに処分するよう心がけます。また、食品の消費期限などの表示にはきちんと従うようにしましょう。
手指の化膿した傷にいる黄色ブドウ球菌の作り出す毒素、エンテロトキシンは、100度の熱で30分間加熱しても分解されませんので、よく加熱した食品であっても危険は変わりません。
手指などに怪我をした人が調理に携わらないようにします。どうしても携わらなければならない場合は、使い捨ての調理用手袋を利用するようにしましょう。
また、食中毒にかかった人(特にノロウイルス)は、症状がおさまってもそのあと数週間、体から菌やウイルスが出ていることがありますので、医師の許可があるまで調理に携わらないようにします。
調理前、食前の手洗いが大事なのは言うまでもありません。手洗いとともに、アルコール系の手指消毒剤を併用するとより効果的です。
生肉類は食べない
また、生ものに関しても、特に生肉類は年齢によらず、食べるのは避けることが賢明です。信頼できる店が提供しているから大丈夫とは言い切れません。
生肉についている食中毒の原因菌は、その肉類が新鮮であっても、肉の生産過程で付着していることがあるからです。そしてどんなに衛生的に取り扱っても、肉に付着する菌をゼロにすることはできません。
また、特に腸管出血性大腸菌やカンピロバクターは、菌の数がほんの10~100個で食中毒を発症させることが知られています。肉類はよく加熱して食べるよう心がけましょう。
食中毒予防のポイント
食中毒の予防はまず、予防の3原則「つけない」「増やさない」「やっつける」を守ることです。
「つけない」…原因菌・ウイルスを食品につけないよう、清潔に調理する。
「増やさない」…菌は調理から時間を置くと食品の中で増えるので、調理後はなるべく早く食べる。
「やっつける」…食品を高温で加熱することで可能な限り菌やウイルスを殺す。
さらに、
「持ち込まない」…ケガや感染のある人が調理場に入らない、汚染されたものや食品を調理に使わない
「ひろげない」…汚染された食品を調理した調理用具を別の食品等に使わない
これらは、厚労省や各自治体保健所などのホームページでも確認できます。
さらに厚生労働省が推奨する「家庭でできる食中毒予防の6つのポイント」では、以下のことを心がけるよう呼びかけています。
ポイント1:食品の購入
生鮮食品は新鮮なものを購入。
消費期限を確認。
購入したらなるべく早く持ち帰る。
ポイント2:家庭での保存
食材はすぐに冷蔵・冷凍庫へ。
冷蔵庫は10度、冷凍庫はマイナス15度をめやすに。
ポイント3:下準備
肉や魚、生卵などの調理は、生野菜や果物など生で食べるものとは別に行う。
まな板、ふきんやスポンジなどの衛生的な管理。
冷凍食品は室温で解凍しない。
ポイント4:調理
調理は過熱を十分する。
めやすは中心部の温度75度で1分以上(ノロウイルスの場合は85度1分以上)。
調理中に食品を室温で放置しない。
ポイント5:食事
食事前に手洗いを励行。
盛り付けは清潔な食器類に。
調理後の食品を室温で放置しない。
ポイント6:残った食品
清潔な食器などを使って保存。
温めなおす際も中心温度75度以上をめやすに。
調理から時間が経っていると思ったら、迷わず捨てる。
【参考】
厚生労働省「食中毒」
政府広報「食中毒を防ぐ3つの原則・6つのポイント」
*「高齢者の食中毒」の1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)を読む
●「高齢者のかかりやすい病気・疾患」の一覧を見る
●「在宅医 ドクター上條に聞く」のコーナーをすべて見る