5月なのに台風が来たり、すでに30度を超える日があったりと、今年も猛暑が予想されます。
夏になると毎年のように言われていることですが、今年も熱中症・脱水にならないよう気を付けて夏に備えましょう。
<監修:上條内科クリニック 院長・医学博士 上條武雄 / 文:星野美穂>
高齢者の熱中症、半数は自宅で発症
外出時や外での作業中はもちろんですが、高齢者では特に自宅や居室での環境を確認することが大切です。環境省の「熱中症予防マニュアル」によると、高齢者の熱中症の半数以上が、自宅で発症していることが明らかになっています。
同マニュアルでは、高齢者の居室の温度が、若年者より2℃ほど高い31~32℃に達していることも指摘しています。これは、高齢者はからだが冷えるのを嫌がって冷房をつけることを嫌ったり、節電意識から使用を控えていることもありますが、老化に伴い皮膚の温度センサーの感度が鈍くなり、暑さを感知しにくくなることも一因となっています。
ですから、部屋の温度管理を本人任せにせず、家族や介護者が確認することが大切です。
環境省は、熱中症にならないための最低の設定温度として28℃を推奨しています。ただし、エアコンの設定温度は機械のセンサーによって実際の室温と異なることがあるため、これも温度計などで測定して確認することが大事です。
1000~2000円前後で、温度と湿度が測れる携帯型のデジタル熱中症計も市販されているので、こうしたものを持っておくと便利です。
一定の時間だけでなく、昼夜の気温差を確認することも大切
朝早くから陽が差し込む部屋、夕方になると西日が差し込み気温が上昇する部屋など、時間帯によっても部屋の環境は大きく変わります。真夏になると、昼間蓄えた熱が放散されて、防犯のために締め切った夜間の室内の温度が昼間よりも高くなることもあります。
高齢者がどんな環境で過ごしているのか、時間帯を変えて確認することをお勧めします。
高齢者の居室を涼しくする工夫
節電も叫ばれている現在、工夫してより効率的に涼しい環境を作りましょう。
エアコンは扇風機と併用するとより効率的に冷房できます。熱い空気は天井のほうにたまり、冷気は床にたまります。扇風機を天井に向けて使用することで、部屋全体の空気をかき回して部屋の温度を一定にします。
また、風を作ることで、体感温度を下げる作用もあります。ただし、体温が下がりすぎることがあるため、からだに直接風を当てないように注意しましょう。
エアコンの室外機も確認しましょう。室外機の温度があがると冷房効率が悪くなります。日当たりの良い場所に室外機が置いてあるなら、よしずなどで日陰を作ると冷房が効きやすくなります。
エアコンがない、つけるのを嫌がる場合は、扇風機や換気扇で室内に風を作りましょう。
外の気温が室内よりも低い場合は、窓を開けて網戸にして、扇風機を網戸からできるだけ近い位置に置き室内に向けて回すと、涼しい外気が室内に入ってきます。換気扇があるなら回しておくとより効果があります。ただし、外気が室温より高いと逆効果になります。
高齢者の室内での熱中症予防は、まず環境の確認から
ベッドを風通しの良い場所に移したり、日当たりの良い窓にはすだれをかける、遮光性のあるカーテンを付けるなど、今から真夏に備えて準備していきましょう。
次回は、見て、触って確認する、脱水症のサインについてお知らせします。
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