お湯やストーブ、引火といった高温によるやけどのほか、温かいと感じる程度の温度でもやけどを起こすことがあることをご存知でしょうか。
それが低温やけどです。
低温やけどは湯たんぽなどを使用中に起きやすく、特に高齢者は自分で寝返りが打てないことや、痛みを感じにくくなっていることから、低温やけどになることが多いといわれています。
まだまだ寒い冬は続きます。安全な暖房具の使い方を知り、低温やけどを予防しましょう。
<監修:上條内科クリニック 院長・医学博士 上條武雄 / 文:星野美穂>
高齢者がなりやすい、低温やけど
低温やけどとは、湯たんぽなど心地よく感じる温度のものに長時間皮膚が接することで、熱いと感じないままやけどになってしまうことです。
60℃で5秒程度、50℃で3分程度、44℃では、6~10時間で皮膚が損傷を受けるといわれています。
特に運動に麻痺がある方、寝返りができない方などが、同じ姿勢で湯たんぽなどがからだに触れた状態になってしまうため、低温やけどをしやすいようです。
また、糖尿病などにより、手足の血液循環が悪く、痛みに気が付きにくくなっている場合も、低温やけどになりやすくなります。
軽症に見えても要注意
湯たんぽや使い捨てカイロ、電気毛布などを使って皮膚の表面が赤くなっていたり、水疱(水ぶくれ)ができていたら、低温やけどを疑いましょう。
低温やけどは、受傷後の早い時期は浅いやけどのように見えていても、時間が経過するにつれて皮膚の内部の細胞が壊死し、深いやけど(重傷)になってしまうことがあります。
そうなると治療に時間がかかり、皮膚移植手術が必要になることもあります。
「赤くなっているだけだから」、「狭い範囲だから」と軽視せず、できるだけ早く皮膚科を受診しましょう。
また、低温やけどは、高温によるやけどと異なり、水で冷やしても意味がありません。
湯たんぽによるものが多い低温やけど
消費者庁が運用する事故情報データバンクによると、2009年1月から2013年1月までに低温やけどの事故情報が入っている製品は、湯たんぽが42件、電気あんかが7件、電気毛布が13件、カイロが24件でした。
足などに低温やけどを負い、全治30日以上の重傷となった重大事故等は、2012年11月から2013年1月までに4件が報告されています。
低温やけどは、特に就寝中に湯たんぽなどを使用して受傷するという例が多く見られます。
就寝中の暖房具などの使い方を見直し、低温やけどを防ぎましょう。
暖房具を正しく使って低温やけど防止を
布団など寝具を暖める場合は、湯たんぽなどをあらかじめ布団に入れておき、布団に入る直前に布団から出します。
電気毛布も、寝る前にスイッチを入れて布団を暖めておき、寝るときにスイッチを切りましょう。
貼るタイプの使い捨てカイロは、直接、あるいは薄いシャツの上から貼らないように注意しましょう。カイロを貼ったまま横になり、カイロが長時間皮膚に押し付けられるかたちになったため、低温やけどを負ってしまったという事例もあります。
湯たんぽやカイロは、省エネの強い味方です。使い方を見直して、安全で快適に、寒い冬を乗り切りたいものです。
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