高齢者の肌の乾燥やかゆみは、意外と根強いもの。しっかりスキンケアをしていても、なかなか改善しないことはよくあります。医療機関でも困っていることが少なくないといいます。
そうした患者さんに対して、アロマオイル(精油)を使ったローションを作って対処している病院があります。そのローションは10年以上も使用され、これまでのところ副作用もなく効果も認められているとのこと。実際にアロマローションを作った薬剤師に、その効果や使い方を紹介いただきました。
<監修:上條内科クリニック 院長・医学博士 上條武雄/文:星野美穂>
病院でも苦労する高齢者の肌コンディション
湘南ホスピタルは、入院患者さんの多くが長期療養を必要とする高齢者である医療療養型の病院です。
この病院でも皮膚の乾燥やかゆみを訴える患者さんが多く、肌が乾燥して粉をふいたようになる「落屑」がみられることも少なくありませんでした。
「保湿剤としてのワセリンや ヒルドイド 、かゆみ止めであるジフェンヒドラミンクリームやクロタミトンクリームを使用しても改善が認められず、看護師や介護スタッフが患者さんの皮膚コンディションを整えるのに苦労していました」と、薬剤科長の佐藤玲子先生は話します。
ラベンダーオイル入りのローションの効果
そこで、病院の薬剤師がラベンダーの精油(アロマ)入りのローションの作り、使用を試みました。
このローションは、病院内での薬の使用を決める「薬事委員会」で審議され、院内での使用が認められたもの。かゆみどめなどを使っても乾燥やかゆみを訴える患者さんに、医師の了解のもと、家族や看護師、介護スタッフが患者さんに使用しました。
使用した実感を同病院の職員に聞いてみたところ、肌の乾燥には約70%が、かゆみや落屑には約50%の人が、効果があると答えました。
同病院では、もう10年以上もこのローションが使用されていますが、「これまで皮膚炎などの副作用がみられた患者さんはいませんでした」と、佐藤先生は話します。
また、乾いた肌に塗る場合、ワセリンはなかなか肌となじまず強くこすってしまうことがありますが、液状であるローションは乾燥の激しい高齢者の肌にも塗りやすく、肌に負担もかけません。
「塗布するのに時間もかからず、介護者の負担軽減にもなります」(佐藤先生)。
皮膚コンディションを整えるという効果以外にも、さわやかなラベンダーの香りが患者さんの不安や不穏改善にも役立ったという意見や、ローションを使ってマッサージを行ったことでスキンシップにも貢献したという意見が寄せられました。
材料は水・オイル・精油だけ
このローションは、自宅でも手軽に作れると、佐藤先生は話します。
材料は同量の水(ミネラルウォータか精製水)とオリーブオイルなどの植物油(肌用)、1%濃度となる量のラベンダーオイルだけ。
100mlのローションを作るなら、まず料理用の計量カップ(できればローション専用を作る)などで植物油(オリーブオイルなど)50mlを測り、100円ショップなどで売っている化粧品用のボトルに入れます。次にラベンダーオイル1mlを入れて混ぜ、最後に水50mLを入れてよく混ぜます。
ラベンダーオイルは100%天然の高品質のものを選びましょう。また、ボトルは使用前に洗って乾燥させてから使います。
そして、「これまでかぶれなどの副作用は経験していませんが、使用前に必ず二の腕の内側など皮膚が柔らかいところに少しだけローションを塗り、しみたり、赤くなる、かゆくなるなどの反応がないかテストしてから使ってください」と、佐藤先生は注意します。
保存料や防腐剤を使用していないので、冷蔵庫に保存し、作って1か月以内に使い切りましょう。
皮膚の乾燥やかゆみは辛いもの。
医療機関で行われているこうした事例も参考にして、解消の方法を探したいものです。
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