お年寄りが発熱したときに、実はやってはいけないことは、「いきなり解熱剤を飲ませてしまう」ことです。せっかく体が外敵と戦おうとしているのに、体温を強制的に下げてしまえば、城の外堀を自ら埋めて城門を開けてしまうようなもの。必要なのは、体を援護して敵と戦いやすい環境を作ってあげることです。
発熱したときに医療機関に連絡するタイミングは、前回記事をぜひご覧ください。今回は、医療機関に行くまでの間、家庭でできる(しておきたい)対処法をまとめました。
<監修:上條内科クリニック 院長・医学博士 上條武雄/文:椎崎亮子>
悪寒があれば温める
体温が上昇を続けていて、ゾクゾク、ガクガクするような寒気がある場合(悪寒)は、着衣やふとんを重ねて体を温めます。必要に応じて、電気毛布や湯たんぽを使ってもかまいません。
手足が冷たければ、もう少し温めても大丈夫。ただし、汗をかきはじめたら、温度を下げるタイミング。「温めすぎ」で熱がこもる(こもり熱*)こともあります。ポイントは「本人ができるだけ気分よさそうに眠れる」塩梅を保つことです。
こもり熱*=主に高齢者や赤ちゃんなど、体温調節がうまく働かない人が、衣服やふとん類をたくさん着すぎて熱がこもってしまい、体温が高くなっている状態を指す
水分補給
発熱すると、体が脱水状態になりやすくなります。誤嚥に注意しながら、少しずつ、こまめに水分補給をしましょう。大量に冷たい水を飲むのはNG。ORS(経口補水液*)、薬局で売られている「OS-1」などを、室温で飲ませるようにします。
市販のスポーツ飲料で、人工甘味料の入っているものは、お腹がゆるくなることもあり、下痢など消化器の症状がある場合は特に注意が必要です。下痢をしてしまうと、かえって脱水してしまうことがあります。また、経口補水液は塩分が入っているため、腎臓病の方などナトリウム・カリウムの制限のある方は、医師から制限されている場合があります。あらかじめかかりつけ医に使ってよいかを聞いておくとよいでしょう。
経口補水液*=電解質と水分を効率的に吸収できる組成の飲料水のこと。自宅でも作れる。水4lに塩3g、砂糖(できればブドウ糖)40gを加える。少量のレモン汁かクエン酸を入れると飲みやすくなる。ネット上で検索すると、果汁やトマトジュースを使ったレシピなども見つかる
39度を超えるときは要所を冷やす
氷嚢やアイス枕で頭を冷やすのは、「冷やすと気持ちがいい」場合だけで十分です。冷やして逆に悪寒がするような場合は、それ以上冷やしてはいけません。
体が火照って熱く、辛い場合は、頭ではなく、そけい部(太もものつけね)や脇の下に、タオルでくるんだ保冷剤などを当てて冷やします。太い血管が体表面に出ている部分ですので、効率的に体を冷やすことができます。本人が冷たがるようであれば、はずします。
参考:「発熱したときの対処法」
解熱剤を使うタイミング
解熱剤は、「熱を完全に下げて治す」という考え方では使いません。「辛いときに少し熱をさげて、心身を休ませる」ためと考えて使います。熱が高くてよく眠れてない、食欲が出ないなどの場合に適宜使うと効果的です。使い過ぎて体温が下がりすぎると、「戦う力」を奪ってしまいます。市販薬であっても、できるだけ医師に指導を受けて使うようにしましょう。
●「高齢者のかかりやすい病気・疾患」の一覧を見る
●「在宅医 ドクター上條に聞く」のコーナーをすべて見る