
3月に入ったとはいえ、寒い日が続いていますね。外気が冷たいときに、手足が冷えるのは当たり前のこと。
ただし、暖房のきいた室内や布団のなかなど、他の人は寒さを感じない環境や、通常は身体や手足が冷たくならない状態で、手足の冷えや寒さを感じる症状を「冷え性」といいます。いったん手足が冷たくなると、なかなか回復せず、辛いものです。
前回は自分でできる「冷え」の予防を取り上げましたが、今回はそれでも改善されない場合の「治療」について取り上げます。
<監修:上條内科クリニック 院長・医学博士 上條武雄/文:星野美穂>
医療機関での「冷え性」の治療
冷え性は体質や生活習慣が原因となっていることも少なくありません。そのため冷え性の改善には、前々回、前回で紹介したような生活改善が大切です。
それでも「冷え」が辛い場合は、医療機関ではビタミンEの内服薬を処方することが多いようです。ビタミンEは血行を促進し、身体を温める効果があります。
また、ビタミンEを含んだ軟膏や、ヘパリン類似物質配合軟膏など、手足の血行を促進する作用を持つ外用薬(塗り薬)でのマッサージを勧めることもあります。
漢方薬を使った治療
冷えの原因には次のようなタイプがあるといわれています。
新陳代謝の低下
高齢者に多いタイプ。筋肉は体温のもととなる熱産生を司っています。女性や高齢者、運動不足の人など筋肉量が少ない人は、冷えやすくなります。
末梢循環不全
手足など身体の末端へ、血液が正常に循環しないこと。運動不足や皮下脂肪の増加などが原因となるほか、糖尿病や高脂血症(脂質代謝異常)でも起こることがあります。
自律神経の乱れ
ストレスや不規則な生活などにより、体温調節の命令を出す自律神経がうまく機能しなくなり、冷えを感じます。
このような状態を改善し、冷えを解消するために漢方薬が使われることもあります。
●冷え性に使用される漢方
新陳代謝低下型 |
真武湯、補中益気湯、十全大補湯、六君子湯など |
末梢循環不全型 |
当帰四逆加呉茱萸生姜湯、当帰芍薬散など |
自律神経型 |
加味逍遙散、五積散、温経湯など |
漢方薬は、その人の体質や症状に合わせて薬を選びます。同じ「冷え」の症状でも、人によって薬が異なります
改善しない「冷え」は、別の病気が隠れていることも
なかなか改善しない「冷え」の原因には、別の病気が隠れていることがあります。低血圧や貧血、膠原病、甲状腺機能低下症、閉塞性動脈硬化症などが考えられます。
疲れやすい
冷えがなかなか改善しない
関節の痛み
片方の足が特に冷たい
歩行の際にふくらはぎに痛みを感じる
などの症状がある場合は、医師に相談しましょう。
1日の寒暖差が大きくなると増える「しもやけ」
また、寒さ、冷たさが影響して出てくる病気として、「しもやけ」があります。
しもやけは、手足の指などがあかく腫れてかゆみが出るもの。1日の温度差が10℃以上になる冬の初めと終わりに出やすい疾患です。寒冷によって手足の指や鼻先、耳など、身体の末端の血行が悪くなるために起こります。また、まれにほおや膝、腕にもしもやけができることがあります。
しもやけの症状は大きく二つに分類されます。指全体が赤紫に腫れ上がり、ゴムのような硬さになる「樽柿型」と、大小さまざまであるが、弓矢の表的のような形状で出現する「多型滲出性紅斑」です。 どちらも、痛みやかゆみがあり、運動したり入浴したりするなど、身体が温まると一次的にかゆみが増します。
しもやけを予防するには、
① 寒さを避ける
② 指先などをマッサージする
③ 汗をかいたときはすぐにふき取り、下着や靴下・手袋を乾いたものに取り換える
などが有効です。
マッサージのときは、ビタミンE含有軟膏やヘパリン類似物質配合軟膏など、血行を促進する作用のある外用薬を使用すると良いでしょう。これらの軟膏は薬局で購入することもできます。
ただし、すでにしもやけができている場合は、患部を強くこすってはいけません。傷ついている組織をより一層、傷つけてしまうおそれがあります。患部に外用薬などを塗り、しもやけの周りをマッサージするとよいでしょう。
3月は少しずつ暖かくなってきますが、朝・夕と日中の寒暖差が大きくなり、しもやけができやすい季節です。しもやけは、「なりやすい人」と「なりにくい人」がいて、毎年繰り返す人は、より一層の注意が必要です。予防は、基本的には「冷え」の対処と同じで、血行を良くすることが大切です。
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