
2013年末から2014年にかけて、全国各地でノロウイルスなどの感染性胃腸炎の集団感染のニュースが相次いでいます。ノロウイルスによる胃腸炎は、1年を通して発生していますが、例年11月くらいから発生件数が増加しはじめ、12月から翌年の1月が発生のピークとなります。そろそろ下火になる時期ですが、まだまだ油断はできません。
ノロウイルス感染症についての対処法を、あらためて確認しておきましょう。
<監修:上條内科クリニック 院長・医学博士 上條武雄/文:星野美穂>
多彩な感染経路を持つノロウイルス
ノロウイルスの感染経路は、主に口からウイルスが入る「経口感染」です。次のようなかたちで、感染すると考えられています。感染経路が多彩なことが、感染の予防を困難にしています。
①ノロウイルスに感染した人の便や吐瀉物(としゃぶつ)からの二次感染
②人から人への飛沫感染
③食品取扱者が感染していた場合、その人を介して汚染した食品を食べた場合
④汚染されていた二枚貝を、生あるいは十分に加熱調理しないで食べた場合
⑤ノロウイルスに汚染された井戸水や簡易水道を消毒不十分な状態で摂取した場合
主な症状は、おう吐、下痢、腹痛
良く知られていることですが、ノロウイルスの主な症状は、おう吐、下痢、腹痛です。発熱することもありますが、軽度であることが多いようです。
感染から発症までの時間は24~48時間。普段健康な方は1~2日ほどで治癒しますが、子供や高齢者では長引くこともあります。
特効薬のないノロウイルス。安静と水分補給が大切
ノロウイルスに効果のある抗ウイルス剤はありません。体力を消耗したりしないように、水分と栄養の補給を十分に行うことが大切です。「下痢をした!」と寒い中、慌てて病院へいくことで、かえって体力を消耗し悪化させてしまうことがあります。
おう吐や下痢があっても、微熱程度で意識もしっかりしているなら、家で暖かくして様子をみましょう。
下痢があるからといって、ノロウイルス感染症では基本的に下痢止めは使用しません。下痢は、「害のあるものを少しでも早く体外に排出しよう」というからだの防御反応によって起こる現象です。ノロウイルス感染症のようなウイルス性胃腸炎などの場合、下痢止めを使うと回復を遅らせることがあります。勝手な判断で下痢止めを使用することは避けましょう。
高齢者で注意することは?
下痢や嘔吐が続くと、脱水になりやすくなります。下痢や嘔吐により水分だけでなくカリウムなどの電解質も出てしまうため、水分補給の際にはぬるいスポーツ飲料や、経口補水液を少しずつ摂取するといいでしょう。ジュースや炭酸飲料は、腸を刺激して下痢をひどくすることがあるので避けましょう。
脱水症状がひどい場合は、病院で輸液を行うなどの治療が必要になります。口からの水分補給ができない場合は、受診しましょう。
次のような症状は、脱水のサインです。
爪を押したあと、色が白色からピンク色に戻るまで3秒以上かかる
手の甲の皮膚をつまんで放したとき、元の状態に戻るのに3秒以上かかる
口の中が乾燥している
舌の赤身が強い
舌の表面に亀裂がある
舌が白いものに覆われている
皮膚に張りがない
手足が冷たくなっている
吐いたものによる窒息にも注意
高齢者は、吐いたものを誤嚥することによって誤嚥性肺炎を起こしたり、吐いた物をのどに詰まらせて窒息したりすることもあります。吐き気があるときは、身体を横向きして、下になったほうの足を伸ばし、上の足を曲げるような形で寝かせると、吐いたものを飲み込むのを防ぎます。
次回は、ノロウイルスの感染予防について、より具体的な方法をお知らせします。
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