高齢になると、視力が弱くなってきたり、握力が低下したり、これまで正しく管理できていたことができなくなることがあります。また、環境の変化、体調の変化により血糖コントロールも乱れがちになります。
そうした高齢者の糖尿病療養を助ける、お役立ちグッズを紹介します。
<監修:上條内科クリニック 院長・医学博士 上條武雄 / 文:星野美穂>
糖尿病療養のお役立ちグッズあれこれ
●インスリンペン専用ルーペ
インスリンを打つためのペン型注射器に取り付けられる、専用のルーペです。
インスリン注入単位を合わせるための数字が表示される窓は、高齢者には見にくいこともあるようです。しかしこのルーペは窓に直接つけられるので、単位数を大きく表示します。
医師や薬剤師を通じて、発売している製薬メーカーに問い合わせれば、無料で入手することができます。
●インスリン注射補助具
握力が弱くなったことで、正しくインスリン注射が打てなくなることがあります。インスリン注射補助具は、注射器に突起のついたすべり止めをつけて、握力が弱くなった方でも正しく注射することができます。
インスリン注射を販売している各製薬メーカーが配布しているので、医師や薬剤師から問い合わせしてもらいましょう。
●自己血糖測定器
自宅で血糖を測定するための機器です。血糖値を測定する本体のほか、指先を針で刺して血液を採取するための「穿刺器具」、「穿刺針」、血液を採取して血糖値を図るための「試験紙」が必要です。
インスリンの使用者は、これらの器具購入に際しては保険で給付されます。経口薬のみの方は自費で購入するかたちになります。
高齢者は、突然血糖コントロールが乱れることがあります。具合の悪いときに高血糖なのか低血糖なのか、自宅で確認できると安心です。
また、こまめに血糖測定することで、生活習慣と血糖値の関連性を知ることができ、血糖コントロールが良くなるという報告もあります。
自己血糖測定器は、薬局で取り扱っているところがあるほか、ネットで購入することもできます。
●糖尿病連携手帳 ※
検査値や治療内容、合併症の検査の所見などが記録できる手帳です。「網膜症」や「神経障害」、「腎症」などの合併症の概要と予防のポイントや、日本糖尿病学会が推奨する血糖コントロールの指標など、糖尿病の療養に役立つ情報もまとめられています。
糖尿病“連携”手帳と名付けられているのは、糖尿病の本人と、糖尿病の治療に関わる人をつなぐという役割を担った手帳だからです。
この手帳に本人の情報をまとめて記載することで、糖尿病専門医、かかりつけ医をはじめ、本人とその家族、看護師や薬剤師、介護関係者などが情報を共有することができます。
●自己管理ノート ※
血糖値の自己測定結果を記録するノートです。
1冊で1年分を記録することができます。複写式になっていて、複写分は主治医に渡すことができます。
●糖尿病患者用IDカード(緊急連絡用カード) ※
低血糖の発作を起こしたときや、交通事故などの緊急時に、周りの人に糖尿病の治療中であると知らせ、適切な処置を促すためのカードです。
薬物療法を行っている患者さんは、胸ポケットなどわかりやすい場所に、常に携帯しておきたいカードです。
※「糖尿病連携手帳」、「自己管理ノート」、「糖尿病患者用IDカード」は、日本糖尿病協会に申し込み、入手できます。
プロフィール
上條内科クリニック院長・医学博士 上條武雄先生
1992年慈恵会医科大学卒業後、2003~2007年まで上野原市立病院内科勤務。2007年から横浜市内の在宅療養支援診療所3ヶ所に勤務の後、2011年に上野原市に上條内科クリニックを開業。地域を支える在宅医として、認知症ケア・緩和ケアなどにも力を入れる一方、アニマルセラピーの普及や、医療・介護が連携しやすい仕組みづくりにも取り組む。忙しく飛び回る毎日の癒しは愛犬のチワワたち(花音、鈴音ともに7歳)。自身でアニマルセラピーの効果を感じる日々。
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